カリスマビルダーが欧米挑戦

弦楽器製造のスギ・ミュージカル・インストゥルメンツ(松本市平田西1)は、同社の「Sugi(スギ)」ブランドのエレキギターとベースの米国と欧州での販売に向け準備を進めている。
中国やシンガポールなどアジア以外での販売は初めて。同社の杉本眞社長(64)は、「国内での需要が安定している今だからできること」と説明。米国と欧州とでは、それぞれ異なる戦略で勝負する。
約40年間、ハンドメードによるギターづくりの道を歩んできた杉本社長は、「カリスマビルダー」とも呼ばれ、楽器は国内外の多くのプロミュージシャンらに愛用されている。
杉本社長にとってエレキギターの本場、米国での販売は長年の夢。「新たな海外での足場を固めたい」と意欲を見せる。

日本人が創るギターを世界に
スギ・ミュージカル・インストゥルメンツ(松本市)

欧米異なる志向販売戦略に工夫

米国では、カリフォルニア州にあるスギ・ミュージカル・インストゥルメンツの製造委託先の工場で生産するギターとベースを販売する。
同工場は2011~12年にかけ設立され、製造責任者は、米国の大手メーカーで工場長を務め、杉本眞社長も信頼を置く「盟友」。これまでここで製造された製品は、すべて日本に「逆輸入」。メード・イン・USAのスギブランドのギターが国内生産の物より安く購入できることなどから、同社の人気商品になっている。
杉本社長は「日本国内生産の商品は1本平均50万から60万円。生産量も少ない上、価格競争が激しい米国ではとても太刀打ちできない」と、米国生産の楽器を現地で販売する理由を説明する。
国内生産の商品を輸出するのは「究極の夢」というものの、スギブランドの商品が米国に出回ることに違いはない。「これをきっかけにブランドの認知度が高まれば」と将来を見据える。
現在、米国での販売用のホームページを作成している段階。実際に販売を開始するのは「来年早々になるのでは」と見込んでいる。
一方、欧州には日本国内生産の商品を持ち込む。今年になり、販売候補国の数店の小売店を視察。実際に商品を見せたところ店主の「そのギターをすぐにここに置いていけ」という反応に、手応えをつかんだ。
「欧州にはオリジナリティーを重視するなど、日本人に通じる職人気質のようなものがある」と杉本社長。今月中にも再度訪問して、価格交渉などをすることにしている。

著名奏者も愛用にじむ「職人魂」

杉本社長は1960年に松本市筑摩に創業した富士弦楽器製造(現フジゲン)で23年間、ギター製造に携わった。その間、スティーブ・ヴァイやパット・メセニーなど数多くの海外ミュージシャンの楽器を手がけ、米国の大手メーカーで技術指導などもした。
2002年に独立して現在の工房を設立。弾き手がストレスなく演奏できるよう「ギターのあるべき作り方」を守り、「10回磨けばいいところを、20回磨いてしまう。車に例えるならボンネットの裏までぴかぴかにするようなもの」という品質とデザインへの強いこだわりから評価が高まった。
現在、「ゲスの極み乙女」「感覚ピエロ」のベーシスト、「RADWIMPS」のボーカル&ギターなど若手ミュージシャンの他、多くのスタジオミュージシャンがスギブランドの楽器を愛用。ロックミュージシャン、矢沢永吉さんの写真集に使われたことも。立ち寄ったレストランなどでBGMに乗って自身が作ったギターの音色が流れてくるときが「至福の時」だ。
現在、8人の社員が製造を担当し、月間の製造本数は自社ブランド25~30本、OEM(相手先ブランド名製造)15~20本。今後、さらに自社ブランドの比率を高めたいとしている。
杉本社長は「ギターやベースを日本人が解釈し、創造するとこんな形になるということを示し、世界の多くの人に賛同してもらいたい。20、30年後にビンテージと呼ばれるギターをつくるのが一番の目標」と職人魂を燃やしている。
(浜秋彦)

投稿者: mgpress