[創商見聞] No.13 宮内 快治 (あったか子育て応援住宅)

子育てを最優先にした家造りを

 ―創業から現在までの経緯は
 家業が工務店だったこともあり、いつかは自分も同じ仕事での起業を考えていました。大学を卒業して市内の住宅会社に就職し、その間に建築関係で必要な技術系の資格を取得。34歳の時に設計事務所として独立しました。
 そのころは、現場のことは何でも分かるし、技術があれば経営もできると思っていました。でもいざ始めると、そうではなかった。経営について勉強できるところをひたすら探し、出合ったのが商工会議所の創業スクールです。資金調達や営業・販促、マーケティング、プレゼンなどさまざまなことを学びましたが、何より、経営にはすべて「計画」が大切だということを教わりました。また、創業スクールの講師の方とは創業後もさまざまな場面でアドバイスをいただき、今でも交流が続いています。
 1人で始めた会社でしたが、現在は長野、諏訪に支店を持ち、従業員17人で営業しています。
 ―経営理念は
 社名の通り、子育て世代の家族に「いつまでも心に残るあたたかい子育てができる家」を提供することです。私は人間がこの世に生まれてきた一番の目的は、「子育てを成功させること」だと思っています。その手助けとして、ご家族やお子さんたちが幸せになれるような住まいを提案したい。
 当社の特徴は2つあります。1つ目は、物ではなく、ライフプランを売ること。お客さまの相談で一番多いのは、お金についてです。住宅ローンなどの返済について不安を抱えている方は多い。その半面、広い土地にデザイン性のある豪華な建物を建てたいという理想もある。そこをすり合わせていくのが私たちの役目です。お子さんが大きくなるにつれて子育てにかかるお金が増えるのに、住宅ローンが重くのしかかっては持続可能なライフプランとは言えません。各ご家庭にとって、本当に必要なものは何かを、話し合いながら進めていきます。
 2つ目は、商品のすべてを「子育てを応援する」という視点から造っていること。子どもたちの健康を考え、壁はホルムアルデヒドを吸収する物を、換気は特殊フィルターにより有害物質を取り除く空気清浄機能が付いた物を採用しています。お母さんが子どもとの時間をつくれるよう高性能の食器洗浄機を取り寄せたり、光熱費の節約を考えて断熱性能を上げたり。常に子育てを最優先にした家造りを考えています。
 ―経営者にとって必要な資質とは
 ビジネスの成功の秘訣(ひけつ)は、いかに個人の能力を生かすかだと思います。人にはそれぞれ強みがあるはずで、それを見極めて、生かすのが社長としての仕事です。
 この考えに至ったのは、創業時の苦労があったからかもしれません。当時は設計もコーディネートも現場もメンテナンスもすべて1人でやっていました。寝る時間もなく、体がいくつあっても足りないほどでした。そんな中、住宅設備機器メーカーの営業の方や、大工さんなど職人の皆さんが休日返上で手伝ってくれたことがありました。1人しかいない状況で創業期を乗り切れたのは、周囲の支えがあったからこそだと、今でも感謝しています。
 その都度出てくる課題に対して、自分一人の力では必ず限界が出てきます。社長だからとおごらず、分からないことや知識の足りないことがあれば、その分野に詳しい人に話を聞いたり、時には助けていただいたり。それは新入社員でも同じで、彼らの方が詳しいことがあれば、お願いするようにしています。
 ―今後の事業展開は
 新しいマーケティングの一つとして、従来の住宅見学会とは違った形のイベントを予定しています。同業、他業問わず「子育て応援」という経営理念に賛同してくれるさまざまな企業と共に「子育て博覧会」を開催します。現在は来場者参加型イベントや、インターネットのホームページ、土地検索サイトなどで集客できていますが、新しい企画を常に開発し、より多くの方にあったか子育て応援住宅のことを知っていただきたいです。
 直近では、松本、長野、諏訪、上田の4店舗で150棟達成することを目標としています。それが達成できたら、県内7つの商圏に拠点を増やし、次は北関東へ進出、そして全国展開へ―。簡単なことではありませんし、今と同じやり方では実現できない目標です。優秀な社員が多いので、皆の潜在能力を最大限に引き出しながら、いろいろな方の力を借りて経営者として成長していきたいと思っています。元々は個人設計事務所の名前で起業しましたが、より子育て世代を応援したいという気持ちから、思い切って会社の顔である社名を「あったか子育て応援住宅」に変えました。今後も、子育て世代の家族が幸せになれるような家造りを、一つでも多く提案していきたいです。

【みやうち・よしはる】 あったか子育て応援住宅株式会社代表取締役社長。千葉県銚子市出身、40歳。大学卒業後、松本市内の住宅会社に就職。現場監督として経験を積み、平成23年に独立。翌年に現社名に変更。現在は松本、長野、諏訪と3店舗で営業し、本年度内に上田に4店舗目をオープン予定。