「家族信託」のポイント

認知症への備えや相続対策などから近年注目されている「家族信託」。成迫会計(松本市巾上)グループの「相続手続支援センター松本駅前店」が開いた「お金と介護施設対策セミナー」を取材し、同店店長でファイナンシャルプランナーの清水あゆ子さん(44)が説明した家族信託のポイントを紹介する。

資産処分や運用自由度高く

◆家族信託とは
預貯金や不動産などの資産を持つ人(委託者)が、その管理・運用・処分を信頼できる家族(受託者)に任せること。委託者が認知症や障害などで意思表示ができなくなっても、契約通りの管理が約束される。
判断能力を失った人を財産を含め保護・支援する成年後見制度もあるが、裁判所への報告義務、資産の積極的運用や生前贈与ができないなど負担と制約が多い。これに対し家族信託は、目的に沿っていれば資産の処分や運用ができるなど自由度が高い。
◆家族信託の目的
家族信託の契約内容は、始期や解約条件なども含め柔軟に作れるので、目的をしっかり決めることが重要だ。
例えば▽認知症になった場合、自宅を売却して施設費や生活費に充てたい▽経営する会社の株を息子に信託し、経営手腕を確かめたい▽障害のある娘が最期まで不自由なく暮らせ、娘亡き後は世話になった施設に残りの財産を寄付したい|など。
清水店長は「家族信託は自分で財産管理ができなくなった時、自身と家族が困らないようにするための備えの1つ。将来、家族に迷惑をかけたくないという方が増えている中、自身のこれからについて家族で話し合う良い機会となる」と言う。
◆手続き
最も簡単なのは、委託者と受託者で内容を決定し、契約書を作成する方法。体裁が整っていれば、役所や裁判所などでの手続きを必要とせず契約を結べる。
しかし、信託財産に不動産が含まれる場合は、家族信託が設定されたことを登記する必要があり、預貯金の信託には信託専用口座が必要になる。また、契約書の条文の誤字や表記の間違いで問題が起こり得ることを考えると、公正証書にしたり専門家の力を借りたりすることが望ましい。
◆注意点
(1)認知症など判断能力を失った後だと家族信託を契約できなくなる。その場合は成年後見制度を利用できるが、身内以外の専門家が選任される可能性が高く、報酬が必要になる。
(2)「誰を受託者にするのか」という点。人選によっては家庭崩壊を招きかねない。親族が十分に話し合ったうえでの円満な契約が重要だ。
清水店長は「委託者の思いが細やかに盛り込めるからこそ、中立公平な立場の人(専門家)がいた方がスムーズ。また、受託者が適切に任務を遂行するように監督する『信託監督人』をつけることもできる」。
◆事例
(1)父親が病気で現金が必要になり子が銀行へ。本人以外は引き出せず委任状を書いてもらい出金できたが、その後、父親の認知症が進んで委任状が書けなくなり、成年後見人に弁護士が就いた。
(2)父親の世話をする子が、キャッシュカードを預かり暗証番号を教わって現金を引き出した。頼まれた買い物のついでにそのお金で自分の買い物も支払ったら、「親の財産を使い込んだ」ときょうだいでトラブルに。
◎ポイント…父親が元気なうちに家族信託契約をし、子(受託者)名義の信託専用口座に一定額の金銭を移す。子は父親の医療費や母親の生活費など、父親が契約書で指定した通りに支払う。
(3)アパート経営で生活する一人暮らしの女性が高齢になり、管理が困難に。施設に入居することになった。
◎ポイント…子と信託契約を結び、アパートを子(受託者)の名義にする。子はアパートを管理し、収益は母親が契約書で指定した通り、母親の施設費や生活費などに充てる。
アパートなど財産の一部を家族信託契約で、それ以外の財産を遺言書で指定し、判断能力が不十分になったら身上監護(生活・医療・介護などに関する契約や手続き)に成年後見制度を利用することもできる。
相続手続支援センター松本駅前店電話0120・97・3713

(宮沢厚子)

投稿者: mgpress