「待機児童」背景に保育士不足

松本市と安曇野市で、希望しても保育園に入れない「待機児童」の問題を7月11日付で取り上げました。背景には深刻な保育士不足があるようです。子どもを受け入れるには保育士が足りない。半面、保育士の資格はあっても働けないという人はたくさんいます。今回は保育士として働いている人、働かない人に意見を聞きました。イクトモメンバーには元保育士もいるので、そのネットワークを生かして各地の声を集めました。

責任と負担に見合わない報酬
自分の子は後回し親への対応も悩み

◇Aさん 中信地域で正規雇用の保育士 子ども高2、小5
保育士が全然足りない上に、サポートしたいお子さんは年々増えていて、人手が本当に足りません!子どもの命を預かる重みと給料のバランスが良くないと感じます。行政内で、保育士の役割は子守りしているだけ、遊んでるだけ、って軽く見られる偏見もあるように感じます。自分たちの専門性を発信していかないといけないと職員同士では話しています。
保育士の仕事は、子どものことだけじゃなく、おうちの人の支援も必要になりました。いわゆるモンスターペアレントがいて、心が折れそうになることもあります。それでも、子どもたちはかわいいです。何かを一生懸命やろうとする姿や、困難を乗り越えた時の喜ぶ姿など、伸びていく子どもたちのそばで一緒に喜びや悲しみを分かち合っていけるのはこの仕事ならではと感じます。お金じゃないなぁ、とも思います。でもやっぱり自分の生活もあるから、安定した待遇があるのが働き手を増やすには一番なのかなぁと思います。

◇Sさん パート保育士 子ども小5、小3=安曇野市
新卒で保育士をしていた際、プール遊びでおぼれそうになった子がいて、震えるほどの衝撃でした。命を預かるということの重大さに改めて気付き、毎日神経を張り詰めての勤務でした。プレッシャーに耐えられず、3年ほどで退園しました。結婚し、自分の子どもが就園となり、もう一度働こうと思ったとき、なかなか仕事が見つからず、再び保育士に復帰しました。
子どもたちはかわいくて、復帰したことはよかった。しかし、入園式、卒園式と自分の子どもの行事は必ず重なり、自分の子に寂しい思いをさせている罪悪感でたまらなくなりました。でも、正規職員ではないので時間給。フルタイムで働くのをやめ、未満児だけをみる民間の保育園でパートをしています。

◇Hさん パート保育士 子ども中1、小3=木曽郡
園児はかわいいけれど、今は親との関わり方とか求められることもすごく多く大変。本当にいろんな親がいるので…。今の親は子どものことにとても敏感だと感じます。正規職員は仕事量も多く負担も責任も大きいのに仕事内容と給料が見合わない。体力勝負の仕事なので一日勤務の日は本当にくたくたになります。慢性的な肩こりや腰痛も職業病かも。

◇Kさん パート保育士 こども小1、年少=佐久市

保育園に入れなかった人が託児所にも流れてきています。仕事は、保育計画の月案、週案、おたよりに毎月のようにある行事の準備が大変。持ち帰り仕事が多いのに、帰宅したら自分の子どもに追われる日々。早番、遅番、会議などあって、家族のサポートがないと勤務は厳しいです。仕事は大変なのに給料は安い。これではやりたいとは思えないでしょう。やりがいがあるから続けているけど、体力的に本当にきついです。

保育士に戻れない理由
複数担任制など負担の軽減を

◇Yさん 主婦、元保育士 子ども2歳=松本市
もっと多くの会社に3歳までの育児休業制度があれば、お母さんたちももっと子育ても楽しめるし、待機児童も減るのにと思う。きょうだいで別々の園へ入れなくてはならない友人もいて、どうにかならないでしょうか。「保育士足りないからいつでも復帰してね」と言われているけれど、自分の子の体調不良時には休みたくても、ただでさえ人手が足りないから休みが言い出しにくい環境なので…。もう少し子育てしながら働きやすい環境なら復帰もありかなと思います。

◇Rさん 主婦、元幼稚園教諭 子ども年長、2歳=松本市
独身時代はフルタイム勤務で朝早くから遅くまで担任を受け持って勤務して、持ち帰り仕事もこなしていました。自宅から通勤していたので家のことを全て引き受けてくれた母の協力なしでは勤まりませんでした。結婚して子どもがいる今、同じことができるかと言われたら絶対無理。国で定められた保育士配置基準でも、1人で数多くの子どもを受け持つことの大変さは身をもって経験しました。複数担任制や補助を入れることで保育士にかかる負担や責任を少しでも軽減できたら、何か少し変わるのでは。

◇Yさん 事務職パート、保育士資格有り 子ども小1、年少=小諸市
資格は持っているけれど、今から保育士として働く?と言われても大変なのを知っているから、今の事務職の方がいいやって思います。子どもの幼稚園の朝の延長保育で、午前7時ごろ受け入れをしてくれた先生が、夕方のお迎え時にもまだ園にいるから「先生、働き過ぎだよ!」って思う。大変な仕事なのだからもっと給料上げてもいいと思います。

【保育士不足】
保育園の待機児童、保育士不足は全国的な問題で、保育士が長く働ける環境を作り、結婚や出産で辞めた「潜在保育士」の復帰を増やそうと、政府は2017年4月から一律2%の賃上げ、中堅職員への昇給制度を設けた。厚生労働省の調査だと、保育士の平均月収は約22万円。一般的に、公立保育園に比べて民間の保育園の給与は低く、キャリアを積む前に辞める保育士は少なくない。

投稿者: mgpress