前回お話しした「感覚の偏り」の1つに「聴覚過敏」があります。多くの人よりも聴覚が敏感すぎて、小さな音でも気になったり、特定の音で強い不快を感じたりします。
架空の事例で紹介します。小学2年生のAちゃんは音にとても敏感な女の子。ガレージで車のドアが閉まる音、2階で寝ている妹の寝言など家族の誰も気付かない小さな音でも必ず気付きます。
赤ちゃんの頃から小さな音でもすぐに目が覚めて大泣きするので、両親は物音一つ立てないよう気を使って生活していました。掃除機をかけるのはお父さんがAちゃんを外に連れ出せる週末のみ、ドライヤーは使わず冬でも洗髪後は自然乾燥。保育園の運動会では、怖いピストルの音が聞こえないように耳をふさぎ、周りが走り始めたのを見てスタートしました。
小学生になると「耳をふさがないでがんばる!」と学校に通いましたが、帰宅後は毎日ぐったり。そのうちおなかが痛くなって登校できない日が続いたため小児科を受診すると、強い聴覚過敏があり、それによるストレス性の腹痛との診断でした。
その後、Aちゃんの聴覚過敏を学校側にも理解してもらい、授業は少人数の教室で受け、うるさく感じる場所ではノイズキャンセリング機能付きデジタル耳栓を使うなどして学校に通えるようになりました。
音の感じ方は人により異なります。例えば掃除機の音が、黒板を爪でひっかく音など身の毛のよだつもののように感じる人もいます。また、級友のおしゃべり、ノートを書く音、椅子をガタガタする音など周囲の雑音がいちいち耳に入ってしまい、先生の声に集中できないという人もいるのです。
対策は「避けられるものは避ける」。椅子の脚に防音保護材を付ける、人ごみに出かけるのは必要最低限に―などの工夫が必要です。周囲の人の理解と配慮も求められます。聴覚過敏用のイヤーマフなど、対策グッズは積極的に使うことをお勧めします。
【なないろキッズ】 #7 「聴覚過敏」理解と配慮を
- 2018/09/04
- 小児科医・新美妙美のなないろキッズ