Aちゃんは年長の男の子。お母さんのおなかにいた時から元気いっぱいで、ハイハイを始めた頃からは起きている間中ずっと動き回っています。
高い所によじ登り飛び降りる、道を歩いていていきなり飛び出す…。両親は気を付けていますが、危険と隣り合わせでいつもひやひやしています。
迷子になったことも数知れません。もちろん何度も何度も言い聞かせ、出掛ける時は手を離しませんが、そのやんちゃぶりは大人の想像を超えます。心の赴くままに行動し、思う通りにいかないと大声をあげてかんしゃくを起こし、手が付けられません。
家の中で過ごしているとエネルギーが有り余って持たないので、毎日公園に連れて行きます。ところが、そこで他の子どもとトラブルになることもしばしば。外出のたびにお店の人、他の子どもや保護者、道行く人に謝ってばかりで、両親は身も心も疲れ果てています。
また、親戚の集まりに行けば「甘やかしすぎ」「もっと厳しくしなきゃ」などと嫌味を言われます。決してしつけを怠っているつもりはありませんが、いくら言っても聞かないので、どうしたらいいか分かりません。
そうした中、市が発達相談を行っていることを知り、行ってみました。すると「ADHD(注意欠如多動症)かもしれない。ご両親は毎日大変でしたよね」とねぎらわれました。
周囲の同世代の子とはちょっと違う大きさのエネルギーを持つわが子に、「自分たちのしつけの仕方が悪いのかとも思ったけど、どう言ってもどうにもならなかった。『多くの子とは違う特性があるかも』と聞いてほっとした」と両親。そして「わが子に合った育て方があるならそれを学び、Aが伸び伸びと自分らしく育っていけるように支えていきたい」と、晴れやかな笑顔を見せました。
子どもは一人一人個性が違います。その個性の違いを客観的に見るのが発達の観点です。次回はAちゃんのその後について紹介します。
【なないろキッズ】 #8 発達の特性知り晴れやか
- 2018/09/25
- 小児科医・新美妙美のなないろキッズ