冬の大三角形と月暈が共演(北アルプス穂高連峰涸沢カール)

前穂高岳北尾根の上で、冬の大三角形と月暈が共演。神秘的な雰囲気を漂わせ、涸沢の星空を飾った。足元の紅葉も彩りを添える=4日午前3時51分 ニコンD5、ニコンAFフィッシュアイ ニッコール16ミリ、ストロボ

きらめく星座幾何学模様の世界

北アルプス穂高連峰涸沢カールで、冬の星座と、月の周りに現れる光の輪、月暈(つきがさ、げつうん)が共演する光景に出合った。
4日午前3時45分。冬を代表する星座が、薄雲のかかる前穂高岳北尾根の上に昇った。オリオン座のベテルギウス、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンをつなぐ冬の大三角形。その正三角形に月暈が絡み、三角形と円の幾何学的な天体模様を繰り広げた。錦秋の涸沢カールの紅葉も足元で彩りを添える。
3000メートルの稜線(りょうせん)が麓からの明かりを遮り、カールの底から仰ぐ星空は世界レベルの輝きだ。涸沢ヒュッテ会長の小林銀一さん(松本市高宮北)は「まるで宝石をちりばめたようにきらめく」と表現する。
作家の井上靖さんは、前穂高岳を舞台にした小説「氷壁」の取材で何度も涸沢を訪ねた。そのたびに「涸沢の星空の美しさは驚愕(きょうがく)的」と小林さんに話したという。涸沢ヒュッテ下部の登山道にある分岐点から夜、ヒュッテへと向かう急登の道をたどったときの印象を、「星降る夜、星に続く道を登り詰めると涸沢ヒュッテは、星空の中にあった」と文学的な表現で語ったと振り返る。
井上さんが「氷壁」の構想を練った星空を、撮影しながら今一度見上げた。
(丸山祥司)