GREAMを立ち上げ1年 平林可后さん 「まず一歩」を進む大切さ

柔らかい声がとても魅力的な平林可后(よしこ)さん(52、安曇野市豊科)。昨年の9月に誕生したコワーキングスペースGREAM(グリーム、島立)を運営する株式会社信州経営パートナーの代表取締役を務める傍ら、個人、企業向けのメンタルコーチをしています。オープンから1年、スタッフが回らないほど利用者数が増えているそうです。眺めが抜群のGREAMで成功の秘訣(ひけつ)を聞くつもりでしたが、少し意外な話をしてくれました。
「以前は会社勤めをしていたんですよ」と平林さん。子どもが小さかった時は内職、年少で保育園に預けてから一般企業でパートとして働き始めたそうです。20年ほど働くうちに、営業まで携わるようになりました。「最初は仕事ができなくてよく泣いていたんですよ。次第に任せてもらえることも多くなり、やりがいと責任も大きくなりました」
そんな平林さんに予想外の出来事が訪れます。「私が40歳の時に、父が病気で倒れたんです」。平林さんの実家は東京。仕事をしながら毎週、安曇野から看病に通ったといいます。そんな生活が半年続いた末、最期をみとることができずにお父さんは他界します。「それからしばらくして、母の具合も悪くなってしまったんです。休みを取ると職場に迷惑をかけてしまう。私も47歳になっていたので体力的にもつらく、父の時のような生活はできないなと思いました」と振り返ります。
そんな時に、誘われて参加した経営塾で聞いた「あなたの人生の経営者は誰ですか」という言葉にはっとさせられます。これからは自分に大切な方を選択していかなくては後悔すると思い、退職を選びました。そして、後悔なくお母さんをみとることができました。
その後平林さんは、これからの自分について考え、経営塾で知り合った方たちと交流し始めました。外に目を向けると男性も女性も起業をしている人の多さにびっくり。情報交換をする中で「こういうふうに集まって話ができる場所があったらいいよね」という声が聞こえるようになりました。「平林さん、やってみたら」と言われ、「え?私?」。そこからは怒涛(どとう)の日々が始まりました。何をするのも初めてのことばかり。事業計画書や数えきれない書類の作成、銀行回り。銀行で事業計画を説明するのですが、書類を読むだけになってしまい自分の思いが伝わりません。「経営をやったこともない、50代のおばちゃんにはお金を貸してくれないんだ」とくじけそうな日々を送ります。でも、できなくて当たり前、今できることをしようと、書類に印鑑を押すことからまた始めます。「まず1歩進むしかできないんです」。書類を確認しているうちに、何が大事かを認識し、自分の言葉で思いを伝えられるようになったそうです。すると「いいですね」と言われ、次々と前進し始めました。
平林さんは「あー、あの時つらかったのが、今ここにつながったのか」と思うことがあるそうです。「失敗すればするほど経験値が上がったと思えばいい。今はここで、寄り添える人になりたいと思うんです。単に場所を提供するだけではなく、積極的に提案もしていきたいと思います」
「GREAM」という名前は「growup(成長)」と「dream(夢)」を合わせた造語。「皆さんと一緒に成長できて、夢をかなえる場所にしたいです」と、とびきりの笑顔で語ってくれました。
(桜井一恵)

【メモ】
コワーキングスペース「GREAM」
松本市島立861-1IZUMIビル3階電話0120・87・1906コワーキングスペース平日午前9時~午後8時、土曜日は午後5時まで、1回500円~貸し会議室午前9時~午後9時日曜祝日定休料金などの詳細はホームページで。

投稿者: mgpress