木曽平沢で「ふるもの市」始まる “いいもの”を販売漆工町に新たな風

漆器の店や工房が立ち並ぶ塩尻市木曽平沢のメイン通り沿いで21日、明治~昭和初期の家具や道具などを販売する「ふるもの市」が始まった。
立ち上げたのは同市の地域おこし協力隊員、立川あゆさん(25、木曽平沢)と今井斐子さん(33、北小野)。市振興公社(大門一番町)で空き家の仲介などを手掛ける2人が、捨てられる運命にあった品々を引き取り、販売する。
10年以上空き店舗になっていた明治中期の建物を、仲間と一緒に5カ月かけて改装。周囲の店が艶やかな漆器を売る中、ふるもの市は異彩を放つが、両者には「長く、大切に使ってほしい」という共通の思いが流れ、店はすっと街になじむ。
漆工町・木曽平沢に新たな風が吹き始めた。

「ふるもの市」女性2人が立ち上げ 塩尻市
「物」と一緒に「思い」継がれ

「長く大切に使う気持ち」発信

塩尻市木曽平沢の「秋の木曽漆器祭体験まつり」に合わせた「ふるもの市」初日は、開店時刻より30分早い午前8時半ごろからにぎわった。
店内には着物だんすや茶だんす、糸車や行李(こうり)、鉄のやかんや火鉢など、さまざまなものが並ぶ。値段は普通のたんすが3000円、高級たんすは1万5000円。道具類は100円から。家具だけで40点はあるが、それでも5軒分という。
「蔵のあるお宅には2、3世代分の家具が残っているんです」と立川あゆさん。地元の家具職人に目利きをしてもらい引き取る一方、道具は立川さんと今井斐子さんが直感で選ぶ。「かわいい、面白い、と思ったものは何でも」と今井さん。
小ぶりの釜を手に「これでおいしいご飯が食べられる」と喜んでいたのは、安曇野市穂高の寺島明子さん(67)、忠円さん(65)姉妹。60歳を過ぎ「自然と一体感を感じる暮らし」を意識し始めた頃から、昔の道具を使うようになった。
「丹念に作られた道具と暮らすと、自分が自然の中にいるようで、気持ちがすーっとなる。息苦しさがなくなるんです」

「いいものがたくさんあるのに、捨ててしまう。もったいないなあ」。地域おこし協力隊3年目の今井さんは、空き家の片付けに立ち会うたびにやるせない思いを抱え、気に入った物は個人的に譲り受けてきた。世の中に流通させたいが、どうしていいか分からない。そんなときに立川さんが赴任。今年2月のことだ。
大学と大学院で建築を学んだ立川さん。古民家に興味を持ち、古い集落などを研究した。「憧れの古民家生活ができる」と塩尻市の地域おこし協力隊に応募。木曽平沢の空き家で暮らし始めた。
古道具の価値や再利用について、2人はすぐに意気投合。市振興公社が以前から家主の相談を受けていた旧洋品店「わじまや」を活用することにし、6月から店の天井に張られた合板を剥がしたり、補強のための柱を打ち込んだりして改修。仲間や地区の人たち約30人が手伝った。
「私一人では建物を借りて市を開く勇気は持てなかったし、2人だけでは市を形にできなかった」と今井さん。

「売約済み」の札が相次ぎ貼られ、大盛況だった初日は若者の姿も目立った。
松本市波田の関根陽太さん(28)は、小さい頃から手作りの道具が大好き。趣味の登山用具は行李にしまい、弁当箱は「曲げわっぱ」。この日は高さ30センチ、幅1メートルほどの棚を購入した。色あせや傷があり、金具がさびた品だが、関根さんは一目ぼれ。「居間に置いたら最高ですよ」とにこにこだ。
「昔の道具は、職人の手でしっかり作られているので長く使えるし、使うほどに味が出る。道具は育てるものであり、育っていくものなんです」と熱く語る関根さんに、妻の早紀さん(28)が「この棚、急に価値が出てる」と笑いながら突っ込む。
立川さんと今井さんは引き取りの際、家主から家具にまつわる思い出話を聞くことが多い。そして、そのエピソードを購入者に話す。ふるもの市では、物だけでなく思いも引き継がれる。

2人はふるもの市が地区の活性化につながることを願う。「ここには漆職人も家具職人もいる。お客さんとの橋渡しができれば」と立川さん。今井さんは「物を直したり、リメークしながら大切に使う気持ちを発信したい。それは漆工町・木曽平沢の精神そのものなんです」と言う。
次回以降は28日、11月4日に開催。週2回を目標に不定期で開く。問い合わせはメール(furumonoichi@gmail.com)

(松尾尚久)

投稿者: mgpress