今回は、強いこだわりなどの特性がある自閉スペクトラム症の小学3年生のB君について紹介します。
B君は、勝ち負けのある遊びで負けると、怒ったり泣いたりして気持ちを切り替えるのに時間がかかります。「絶対に勝つぞ!」という意気込みが強過ぎて、「負ける」という事態を想定してなく、どのように振る舞っていいか分からず混乱しているようです。
勝った時に「やったー!」と大喜びするシーンは印象に残っても、負けた時どうしたらいいかが本人のイメージに入っていないのです。
お母さんは、勝っても負けても楽しく遊べるようになってほしいと、定期的に通っている発達センターで相談してみました。すると先生は「かっこいい負け方の練習をしよう」と提案したのです。
トランプゲームで遊ぶ際、ゲームを始める前に負けた時のせりふとして「悔しい、次こそ勝つぞ!!」「おめでとう、よかったね!」という2つを提示し、参加者みんなで口に出して練習しました。
また、「悔しい!」ではその場でじだんだを10回まで踏んでいい、「おめでとう!」は10回拍手する|といった行動例も加え、練習してからゲームに臨みました。
するとB君は、負けても「悔しい!」と10回じだんだを踏み、勝った人に「おめでとう!」と拍手して2回目のゲームにスムーズに移れました。
そして2週間後の運動会。前年はB君がいる白組が負けてしまい、泣けて泣けて家に帰ってからもしばらく引きずりました。今年は先生に協力してもらい、運動会前にクラスで「勝つこともあるし負けることもある」と確認し、負けた時の練習もみんなでしました。結局B君の白組は負けてしまいましたが、「悔しい!」とじだんだを踏んで、あっさり気持ちを切り替えることができました。
こんなふうに練習をして、経験を重ねてパターンが備わることで、自閉タイプの人でも対応できることはどんどん増えていきます。
【なないろキッズ】 #10 練習と経験を重ね成長
- 2018/11/06
- 小児科医・新美妙美のなないろキッズ