外国人に向けて白馬で防災訓練

「ラジオを持っていますか」「避難所って知っていますか」。県と白馬村が10月に開いた「外国籍県民のための防災訓練」。避難所体験訓練に参加した村に暮らす外国人たちは、大多数が「持っていない」「知らない」と答えた。
2017年末の在留外国人数は過去最高の256万人、県内では05年のピーク時よりも減ったが3万人余が暮らす。今年も自然災害が相次ぐ中で、言葉や生活環境、被災や訓練経験の有無といった壁により、慣れない土地で被災した場合、外国人が抱える不安やストレスは計り知れない。
世界的なスキーリゾートとして知られ、冬場の外国人観光客や在住者が急増する白馬村。訓練参加者の声に耳を傾けると、外国人に向けた災害時支援で何が必要かが見えてきた。

安心できる仕組みや心配り「防災訓練」が初めての人も

白馬村北部農業者トレーニングセンターで開かれた「避難所体験訓練」に参加したのは、村内で暮らす中国や英国出身の8人。多くは来日して数年の宿泊施設経営者や家族たちだ。NPO法人多文化共生マネージャー全国協議会(大阪市)の村上典子さんを講師に、大地震が発生した想定で、基本的な行動や避難の方法や留意点などを学んだ。「防災訓練」自体が初めての人が少なくないからだ。
村上さんは地震発生直後は「身の安全確保が第一」とし、参加者は机の下に隠れる訓練をした。揺れが収まったら、火の元や家族の安否確認-なども説明。災害用伝言ダイヤルの使い方も体験した。
「避難所」がイメージできない人も多数。「地震が起きたらすぐに行くのか」「通訳はいるのか」「トイレや毛布はあるのか」「家の近くでテントや車の中で避難していてもいいのか」…。村上さんは、建物は安全で正しい情報や食料が得られるが、プライベート空間やお祈りする場所はなく、ルールや生活時間を守らなければ、などと話した。避難所に持っていくべきものを選んだところ、クレジットカードを選択した人がいたが、「地震の時、カードが使えるかどうか、お店が開いているかは分かりませんね」と村上さん。
「SNS(会員制交流サイト)での情報収集は早くて便利だが、うその情報が流れる危険性もある。災害時に一番助け合えるのは近所の人かも。日ごろから仲良くしておきましょう」と伝えると、深くうなずいていた。

「言葉」も問題事前に知識を

訓練を終えた参加者に話を聞いた。英国出身のロバート・オーエンさん(44)は「避難所は冬の寒さが心配。ペットの猫が気がかりで、避難所に連れて行ってもいいのだろうか」。
中国出身の陳雅欣さん(29)は「訓練は人生初。白馬に来て半年だが、友達もいなくて日本語もできない。5月の地震はとても怖かった。地域の人が私たちの視点に立って考え、たくさんの助けがあることを知り安心した。今日の経験をいざという時に生かしたい」。夫の苗竹さん(33)は「日ごろ防災無線で流れる内容がわからない。少なくとも英語での放送があると助かる」と語った。
同協議会の高木和彦副代表理事は、同日開いた村の秋季火災予防運動消防総合訓練で「自国で地震に遭ったことや訓練経験のない外国人たちが白馬村周辺を大勢訪れているが、災害に対するスタートラインや困り事も違う。私たちには当たり前の知識や情報を、事前にも起こった後にも伝えていくことが重要」と伝えた。

白馬村は外国人が経営する宿泊施設や店が増え、働く人などが増える冬場は743人(2018年2月)の外国籍住民がいる。スキーシーズンにはオーストラリアなどからの客が急増し、17年は延べ11万人の外国人観光客が宿泊した。村の公式フェイスブックページでは行政情報の発信を英語でも行い、大雨による避難準備情報、クマ出没情報や除雪対応などの情報も出している。
県は13年度から、災害情報やニーズに対応した情報を多言語に翻訳して届ける拠点「災害多言語支援センター」の設置・運営訓練や外国籍県民向けの避難所体験訓練を市町村と連携して実施し、観光地の防災対策にもつなげている。観光庁監修の外国人旅行者向け情報提供アプリ「Safety tips」では、多言語による災害情報を配信している。
震度7を観測した9月の北海道での地震では、広域の停電などで情報を得られず、困惑する外国人が多数いた。外国人観光客が増加している中信地区でも、被災時に住んでいる人、訪れる人が安心できる仕組み作りや心配りが必要だ。
(青木尚美)

投稿者: mgpress