看護師をしながら漫画を連載 ぷろぺらさん

「死んでる人が立ってるのと、生きてる人が倒れてるの、どっちが怖い?」
そう聞かれると「死んでる人」と答える人が多そうだが、患者の急変を何より恐れる看護師は「生きてる人」を選ぶ-と話すのは、漫画「ぴんとこなーす」の作者で、現役看護師のぷろぺらさん(松本市在住)。職場と患者に迷惑が掛からないようにと本名は非公開。看護師の日常をありのままに、コミカルに描いた漫画が注目を集めている。
漫画は、ツイッターへの掲載から看護師向けのサイト「看護roo!」での連載、7月にはいそっぷ社(東京)からの単行本出版と大きく羽ばたいた。医療関係者にとどまらない多くの人からの共感に、ぷろぺらさんは「誰かの力、支えになればいいのかな」とほほ笑む。

自身をモデルに現場の日常描く

漫画「ぴんとこなーす」の主人公は、勤続10年を超える看護師のナスさん。ぷろぺらさん自身がモデルでもある。30歳を超えた独身看護師のワカさんや経験20年以上のパート看護師、イトウさんらも登場する。
タイトルの「ぴんとこなーす」は、「○○日記」ではありふれていて、ぴんとこないので「『ぴんとこなーす』でいいじゃん」と決めた。「誰だ?看護師は白衣の天使とか言いやがったやつは」という気持ちが、漫画を描く原動力という。
何も分からない看護師1年目の苦労。絶対大丈夫と思ったのに点滴を血管に入れられずに失敗したときの屈辱感。患者が苦しむたんの吸引はやりたくないが、やらないと死んでしまう…というジレンマ。事故防止用のセンサーマットからの呼び出しに慌てて病室に行くと、医師がマットを踏んでいた-。そんな日常が展開される。
若手看護師の相談を受けて一緒に悩む姿や看護師同士の上下関係、医師との関係なども描かれ、現場で働く人の思いがリアルに伝わってくる。

交流サイトでの連載がスタート

3年ほど前、その日あったことや嫌なことなどを4こま漫画に描き、ツイッターにアップしてつぶやいたのが始まり。看護師の仕事は確かに大変だが、「大変な方が偉いという風潮がある。大変さ比べをするより、楽しくやるほうが粋」と考えた。漫画で描いたのは、「文字より訴求力があり、コミカルに伝わる」との思いからだ。
当初は紙に描いてスキャンし、ネットにアップしていたが、その後パソコンで描く技術を習得。漫画投稿サイトに投稿していたところ、看護師の交流サイト「看護roo!」から声がかかり、昨年1月に連載が始まった。
「看護師だって人間。いらいらもするし、悪口も言う。看護師のやりとりは、客観的に見たらこんなに面白いことはないんですよ」と笑う。

看護師の世界と社会の橋渡しに

アフリカで暮らす日本人医師を描いたさだまさしさんの曲「風に立つライオン」を聞いたのが、看護師を目指したきっかけという。「人に関わる、尽くせることは本当にすごいことと涙がぼろぼろ出た」。辞めたいと思ったことは星の数ほどだが、「素晴らしい曲を作りやがって」というさださんへの逆恨みパワーで頑張ってきたという。
病院は何が起こるか分からない世界。それだけにいつもプレッシャーにさらされ、「○○しなくてはいけない」と抱え込む看護師も多いが、「そういう看護師の救いになれば」と漫画を描き続ける。
「世間が求める看護師像とは違うが、こんな男前な看護師がいてもいいんじゃないですかね」。看護師だけでなく、学生や社会人などいろいろな人に読んでもらい、「看護師の少し閉鎖的な世界と、社会をつなぐ橋渡しができたらうれしい」。
「ぴんとこなーす」は127ページ。1404円。
(八代けい子)

投稿者: mgpress