佐藤大史・アラスカ撮影紀行 オーロラ編(上) 6日かけて狙いの稜線到達

なんとか時間と予算を作り、9月後半から1カ月ほど米国アラスカに遠征に出た。アラスカ北部、北極圏にある全長1000キロを超す広大な山脈、ブルックス山脈に入り、数日かけて狙いの稜線(りょうせん)まで出る。そしてそこから「月とオーロラ」を撮ることと、タイムラプスという動画を作ることを、今回の目的としていた。
約3週間分の食料と電池、冬用の装備を背負い、原野に入る。夏至のころは24時間日の沈まない北極圏だが、この時期は午後5時を過ぎると暗くなり、夜にはオーロラが空を舞う。そんな中、ヘッドライトをつけて暗い中も歩き続け、歩き始めてから6日目、狙いの稜線に到達した。
2回に分け、強風に苦しめられた今回のアラスカ遠征の物語と写真の一部を紹介する。

地球感じる風景を届けたい
心の準備まで整えての1歩

今回の遠征も例にもれず慌ただしい出発となった。大きなザックとカバンをいくつも持ち、JR大糸線に乗る時も、特急あずさに乗る時も、駆け込みで飛び乗った。成田から2回の乗り換えを経てフェアバンクス(米アラスカ州)に着き、駐車してある穴の開いたボロボロの私の車に乗り込んだ。
3週間分の食料の買い出しを済ませ、20リットルのガソリンが入ったコンテナを3つ、車の屋根に載せて北上。600キロほど行き、目的の山岳エリアに入る。9月後半だが、北極圏は真冬の信州のようなもの。必須の冬用の装備も入れると、背中に背負う30キロほどのザックと、前に抱える20キロほどのカメラバッグにパンパンに詰めても入りきらない。一度に背負えなそうな食材と燃料と電池を、何回かで運ぶしかないかな。そんなことを思いながらツンドラに荷物を広げていた。
3時間ほどかかっただろうか、準備は済んだのだが、問題はここからだった。原野に向け、1歩目が踏み出せないのである。大丈夫だ、忘れ物はない、クマスプレーだって新品だぜ。そう言い聞かせてもなぜか足が出ない。ザックを下ろし、数回深呼吸をしてみる。そうか、言葉にしてしまえばなんのことはない、心の準備が足りていないのだ。携えるべき意志が、私の中に満ちていないのだ。きっと、忙しさにかまけて日常の延長で来てしまった私が原野に踏み入るべきでないことを、本能と経験値が知らせたのだろう。結局その日は歩き出せず車中泊をし、翌日、歩き始めた。

見られる頻度は

ここで「オーロラはどのくらいの頻度で見られるのか」という、よくいただく質問にお答えしたい。結論から言えば、オーロラの現象自体は基本的に毎晩起こっている。が、雲よりはるか高いところに出ているので、曇ってしまえば見られないし、太陽の活動が弱いと発光もおとなしくなるため、人間の目で見るのは難しくなる。
また、位置的には北緯60数度以上の高緯度(中信地区は36度くらい)でないと見られない。自然現象なのでこの限りではないが、頻度としては4、5日に一度は見られると言っていいだろう。
強いオーロラであれば街中で見ることもできるが、地球を感じるような原始性の高い風景を皆さんに届けるため、北極圏にあるブルックス山脈での撮影を敢行したというわけだ。時にメソメソしながらも、なんとか山の稜線までたどり着き、撮影にこぎ着けるまでのエピソードと、原野でテント暮らしをしている時のハプニングなどについて、次回にお伝えしたい。

(佐藤大史・写真家・安曇野市在住)

投稿者: mgpress