改装した蔵群の一角に「花屋彦兵衛」 「和の花」の店松本で挑戦

店内に並ぶのは菊やナナカマド、そして山野草の盆栽─。松本市旭1に9日、和花の生花店「花屋彦兵衛」がオープンした。国道143号沿いの個人宅や蔵をリノベーションして再活用している一角で、ディスプレー用に古い金庫やたんすを置く。和の花は、古い建物にしっくり合う。
展開するのは、東京に本店を持ち、松本に2店舗ある生花店「メゾンフルーリ」。専務の佐々木久満さん(42)が20年ほどあたためてきたアイデアで、「和の花信州松本」がコンセプトだ。
明治時代に江戸友禅の第一人者でもあった母方の曽祖父が、江戸時代の着物を収集・研究して斬新なデザインを生み出したように、「花の世界でも挑戦してみたい」と佐々木さん。和の物やこけ玉などに興味を持つ若い人が増えているのも追い風にする。

「和の魅力感じてもらう場に」
全国でも珍しい専門店を松本で

芥子(けし)色ののれんに「花屋彦兵衛」の文字。「これが生花店?」と首をかしげる店構えだが、そこに立つと空気が「ふっ」と変わる気がする。まるで江戸時代にタイムスリップしたかのようだ。
同店があるのは、旧町名・和泉町にある穂高進さん(68)所有の建物の一角。1856(安政3)年と1872(明治5)年築の蔵、大正時代に建てられたとみられる母屋など、古い建物を使った集合店舗だ。
ほかに1棟で「アロマ&エステICOU衣香」が営業し、母屋は飲食店が入居を検討中。穂高さんの家が昔、穀物商や茶問屋を営み、祖先が残した古文書などがあることから、資料館を設けようという動きもある。
同店は、和の生花店に合う物件を探していた佐々木久満さんが、穂高さんから出店の依頼を受けてオープン。「生ける花といえばヨーロッパのテイストが主流だが、最近は若手アーティストが生け花の先生として活躍し、和のスタイルが見直されつつある。半面、和の花を専門に扱う店は全国的にも珍しい」と佐々木さん。
入り口横には山野草の盆栽が並ぶ。「こけ玉を部屋に飾る人が増えているが、こけにアイビーといった和洋折衷ではなく、本物を置きたい」と、佐々木さんは国内やアジア近辺の山野草を寄せたり、玉にしたり。
ダイモンジソウやリンドウ、菊の仲間などが、凝縮された世界でかれんな美しさを競う。「草の盆栽なので冬場に一度枯れ、春にまた芽を出す。毎年趣が違って面白い」という。
店内には糸菊のほか、和風にアレンジできる大輪の輪菊(りんぎく)、ダリアなどが大きな壺に入れられて並ぶ。ナナカマドもあり、季節の実物や枝物も扱う。

偉大な曽祖父の名前を受け継ぐ

「彦兵衛」の屋号は佐々木さんの曽祖父、大黒屋彦兵衛が江戸末期から明治期に、「大彦」の屋号で東京・日本橋橘町で呉服店を営んだことにちなむ。彦兵衛は、徳川家や前田家などに伝わる江戸時代の着物や小袖を収集・研究し、伝統に新しい構図や図柄を融合させ、染織刺しゅうの江戸友禅の偉大な作り手だったという。
曽祖父の温故知新の活動を、植物の世界で受け継ごうという思いも強い。「呉服店の丁稚(でっち)から修業してのれん分けし、歴史にも名を残した。花屋としてこの名を復活させたい」と佐々木さん。
取り扱う花のアレンジやギフトは、従来とは違うスタイルだ。アレンジは「花活(い)け」(3000円~、以下税別)。例えば枝物に花を一輪合わせ、それを趣のある籠に生け花のように作って届ける。盆栽は山野草を組み合わせる「草合わせ」(700円~)だ。
佐々木さんは「ほとんど趣味の店。採算が取れるか、松本にはまるかも手探りの状態だが、求めている人もいるのでは。外国人観光客も増えており、和の花や和の魅力を感じてもらえる場所になれば」と松本で挑戦する。
「江戸時代は、そうやって商売していたのでは」と、営業時間は正午から日が暮れるまで。落ち着いた色合いの和花を扱う店は、時間の流れもゆったりしている。
月、火曜定休。℡0263・31・6187。穂高家の蔵群の問い合わせは衣香℡0263・55・6691

(八代けい子)

投稿者: mgpress