カナダ在住の詩人 高山宙丸さん 松本で里帰り公演 朗読スタイル体験

松本市梓川出身の高山宙丸(そらまる)さん(39)はカナダ・バンクーバー在住の詩人。日本語と英語で詩を書き、さまざまなスタイルの朗読パフォーマンスをしている。アートプロジェクト組織の主宰者、ファッションモデル、作詞家の他、卵や乳製品なども食べない菜食主義者「ビーガン」といった多彩な顔を持つ。
2015年にはバンク-バーにビーガン・プリン店をオープンし、世界中から客が訪れる人気店に。日本のアパレルブランド「グローバルワーク」のCMでは俳優の大沢たかおさんや長沢まさみさんとも共演している。
そんな高山さんが11月、2年ぶりに松本市内でパフォーマンスをした。これまで一度も体験できずにいた高山さんの世界を感じようと、イベント会場に足を運んだ。

「楽しい」でどこまで行けるか

今後の活動の軸 2つのイベント

まつもと市民芸術館近くのベーグル店で11月14日夜、高山宙丸さんと、革新的な打楽器演奏で世界的に活動する中谷達也さん(米国在住)が出演するイベントが開かれた。
ゴングやドラムなどを特殊な弓やスティックでこすったり、たたいたりして生み出される音に触発された高山さんは、詩を朗読しながら店の奥へ行ったり、厨房(ちゅうぼう)に入ったり。
サバンナに生きるヌーを題材とした作品では高山さんに促されて参加者も大声で「ヌー」と連呼。不思議な連帯感が生まれた。思い描いていた詩の朗読とはかけ離れた体験に、何とも言えぬ恍惚(こうこつ)感が残った。
高山さんは「気付いたら店中を歩いていた。中谷さんの音で今日のパフォーマンスが生まれたし僕はそういうものを大事にしている。最高に楽しかった」と笑顔を見せた。

高山さんの詩の朗読スタイルは多様だ。音楽と合わせて読む、静かに読む、読んだ後に語り合って食事を共にする…。一人芝居風、英語や日本語の字幕を壁や体に照射しながらというスタイルも。大切にしているのは「楽しい」ことだ。
高山さんは今年、今後の活動の方向性を決定づける2つのイベントを、バンクーバーの仲間と立ち上げた。
1つは「バベルの塔」。母国が違うバンクーバー市民15人が、高山さんの詩「バベルの塔」をそれぞれの国の言語に訳し、同時に読むパフォーマンスだ。
もう1つは「ラビリンス・オブ・ヒドゥン・メッセージ」。顔も名前も分からない誰かが残した大切な言葉が自分の元に届く、という趣向で750人が参加。「誰もが詩人になれる。詩はそのくらい身近にあっていいと思う」と高山さん。「この2つは今後も継続したいし、松本でもぜひやりたい」という。

世界の人に触れ 決めた詩人の道

高山さんは松本深志高校を2年で中退し、東京で働き始めた。「このまま大学に行って就職するのかな、そう思った瞬間つまらなくなってしまった」
前々から興味があった哲学を深めようと19歳で勉強を再開。高卒認定試験を経て法政大哲学科へ入った。卒業後は3年間地元で働き、ワーキング・ホリデー制度を利用して4年半、世界を旅した。
詩人として生きると決めたのは28歳の時。「いろんな仕事を思い浮かべて、詩人だけが引っ掛かった」。バンクーバーへ渡ったのは2011年秋。ビーガン料理店で働きながら詩人として活動。朗読会で提供した妻ヒロさんの手づくりビーガン・プリンが評判を呼び、店を出した。
15年には仲間とアート企画組織をつくり、三角みづ紀さんやねじめ正一さんら著名な詩人を招いてイベントを開いたが、中心メンバーの1人は、路線バスでたまたま席が隣で意気投合した現地の男性という。
高山さんは全てにおいてこんな感じ。ビーガンになったのは9年前。滞在先のオーストラリアで家を貸してくれた人がビーガンで、彼に気を使ってビーガン生活を始めたのがきっかけだ。「料理を工夫するのが面白い」と気負いがない。
旅を通していろいろな「生き方」に触れ、仕事もさまざまなものを経験。バンクーバーでは2度の失業の憂き目にあったが、「失業中は時間があった」と、第一詩集「月とブランコ」を出版した。すべての出来事を実に楽しそうに話す。
「僕は楽しいことだけをしてどこまで行けるかを知りたい。だから『苦労して勝ち取る』ということを意識的にしないようにしている」と話す姿はさながら哲学者。「何かを獲得しようとしている限り、何を獲得しても幸せになれないというのが、現時点での僕の結論。大切にしている言葉は『ゴー・ウィズ・ザ・フロー(流れに沿う)』です」

(松尾尚久)

投稿者: mgpress