地域の憩いの場 営業再スタート

池田 めいの竹下さんら再開

四半世紀ほど前から地域の人に親しまれてきた池田町池田の和風スナック・カラオケ「夕映(ゆうばえ)」。先代経営者が亡くなり、ここ数年は閉店状態だったが、今春から先代のめいで理容師の竹下栄さん(57、塩尻市広丘堅石)が、新たな店として再スタートさせた。「叔父と叔母が一生懸命やってきた店だから」と一念発起し、知人の小林明正さん(34、松本市村井町南)と共同で経営している。
飲食業は未経験だったが、片道1時間弱かけて通い、店を守る2人に、地域の人や来店客らの励ましが相次ぐ。開店から9カ月。幅広い年齢層が来店し、話し声や歌声が響く。店内には、先代の時代から店に置かれたちょっぴり古びた2体の招き猫。地域密着を目指す店を見守っている。

呑み処&カラオケ 夕映

地域の励ましや支え温かく

惜しむ声に再開を決意

「夕映」は、前店主の北原昌平さん、栄子さん夫婦が自宅近くの現在地に店を開き、和風スナック、カラオケの店として営業してきた。7年前に昌平さんが他界した後も、しばらくは栄子さんが切り盛りしたが、栄子さんも昨秋亡くなった。
店の後継者はなく、閉店。惜しむ声が聞かれる中で、嫁ぎ先で理容師をしていためいの竹下栄さんが再開を決意した。「降って湧いた話だけれど、料理も嫌いじゃないし、旅館の仲居さんのような仕事にも興味があった。人生は1回だけ。チャンスを生かすも殺すも自分次第」と竹下さん。家族も背中を押してくれ、家業の理容室は夫と長男が守っているが、自分の指名客の担当や多忙な時のサポートは続け、2足のわらじのママだ。
竹下さんは、叔母の栄子さんとの不思議な縁をしみじみ感じる。名前に同じ漢字が入り、栄子さんが店を始めたのも今の自分に近い年だった。
共同経営することになった小林明正さんは、竹下さんが信頼を置く知人。ガソリンスタンド勤務やトラックドライバー、配送仕分けの仕事などを経験し、起業を模索していたタイミングだった。男性客らと車の話で盛り上がり、気さくな雰囲気のマスターとして、店の屋台骨を支える存在だ。

店名は「呑み処(のみどころ)&カラオケ夕映」にした。外装の一部と店内は改装したものの、往時の趣きも残した。昌平さんが大切にしていたドラムセットを飾ったり、ソファはカバーをかけ直して当時のテーブルと共に使ったり。長年置かれてきた招き猫も、当時の空気で懐かしく店を包む。地域になじんだ名称で、店のルーツを大切にしたいと、店名も受け継いだ。
詳しくない土地で店を持つ不安も当初は抱いたが、今年の初め、開店準備に夜遅くまで励んでいると、地域の人がのぞいては「いつからやるだ?」「(開店を)待ってるからね」。開店後は「遠くから来て、店を開いてくれてありがたい」という人、野菜や山菜を持ってきてくれる人、「ネギなくなったら畑から抜いていっていいよ」との声、知り合いを連れ立って来店してくれる常連客…。周囲や家族の励ましや支えは予想以上に温かく、新天地での出会いや経験の数々が、手探りの日々の土台を固めつつある。

地域に根付く気軽な場所に

開店時間の午後1時すぎになると、隣村から来店したシニア世代の女性の楽しげな歌声がカラオケスペースに響いた。畳敷きだった部分を、通信カラオケを入れた個室にしている。昼間営業のカラオケ店は近隣には少なく、午後1~4時は歌い放題、ワンドリンク(ソフトドリンク)付きで1000円という料金も手ごろ。
夜6時からは呑み処の営業が開始。手作りスモークベーコン、ギョーザの皮のピザ、煮イカ、漬物といったおつまみをそろえる。最近では、地域イベントへの出店、大人数の予約が入るなどの動きも出てきた。
竹下さんは「誰もが気軽に寄れる憩いの場になれば」。小林さんは「地域のみなさんの盛り上げや厚意がありがたい。長く続けていきたい」。家路につく来店客を、外まで丁寧に見送る2人の姿が印象的だった。
午後1~4時(カラオケのみ)、6時~午前0時。火曜定休。電話0261・85・4088

(青木尚美)

投稿者: mgpress