安曇野の北山さん 米出版社から顕微鏡写真作品集刊行

安曇野市穂高有明の個人美術館、安曇野ビンサンチ美術館館長でミクロデザインアーティストの北山敏さん(69)。顕微鏡写真の作品集「ミクロ×宇宙」を米ニューヨークの出版社から刊行した。
ワインやコーヒー、しょうゆなど、身近な液体を結晶化。それを顕微鏡で捉え、作品に仕上げる。ミクロの世界だが、色彩はきらびやかで、幻想的な宇宙空間のように壮大なスケールで迫ってくる。
4~5月に東京・銀座で開いた北山さんの個展に、たまたま訪れた米国人の出版社社長が出版を持ちかけ作品集が実現。同時に日本の写真通信社の社長も北山さんの作品を「科学と芸術の統合」と評し、個展を企画するなど今後のサポートを約束した。一滴の液体から生み出す小さな「北山ワールド」が、大きな注目を集め始めている。

結晶科学の知識生かし撮影

最新作など 50作品収録

写真集「ミクロ×宇宙」は76ページで、北山敏さんの50作品を掲載。作品は番号で表示し、1~29番までは4~5月に東京都の銀座で開いた個展に出品した最新作。30~50番はワインやコーヒー、しょうゆなどといった、身近な液体の結晶を撮り始めた約6年前からの作品だ。
表紙に使われた作品は、宇宙空間で色とりどりの鋭い光が飛び散っているように見える。他には漆黒の闇に宝石のような物が散らばっていたり、極彩色のニシキヘビを連想させたりする作品もある。
作品の制作には偏光顕微鏡を使用。日常にある液体を一滴プレパラートに落とし、結晶科学を学んだ知識と技術で結晶化。その過程を数百倍~5000倍に拡大し、屈折した光が入ると、さまざまな色が現れる。その瞬間の美しさを写真に収めている。

銀座で40日間開いた個展。偶然足を止めた米国人のジョン・オドネルさんが北山さんの作品に興味を持った。北山さんと30分ほど談笑した後、ニューヨークの出版社の社長であることを明かし、「出版に興味はあるか」と切り出した。「ある」と即答した北山さん。個展終了後、オドネルさんからメールが届き、そこには9月の出版に向け、6~9月までの予定がびっしりと書き込まれていた。本当の話と思っていなかったため「これには驚いた」と北山さん。蓄積した写真データをすべて渡すなど、オドネルさんの予定に従った。
9月、オドネルさんから「写真集の最終打ち合わせをする。安曇野で会いましょう」というメールが届き、北山さんの自宅で再会。オドネルさんが持参したのは、ほぼ完成した写真集だった。

通信社の社長 「やばい」絶賛

写真集の出版日に合わせて12月8日、東京都港区の会館で「ミクロ×ルネサンス」と題した北山さんの研究発表会が開かれた。主催したのは同中央区の写真通信社、ゼータイメージの村山功社長。オドネルさんと同様、北山さんの個展で作品に魅せられた。11月には村山さんが企画し、北山さんの個展を銀座で再度開いた。
村山さんはこの日、約50人の参加者を前に、「会社創業以来、10万枚以上の写真を提供し、誰よりも写真は見ている」とした上で、北山さんの作品を「やばい」という言葉を使って絶賛。「今まで誰かをサポートすることはなかったが、今回は命懸けで北山さんを応援したい」と宣言した。
続いてシャンパンを使った写真を初公開。村山さんは「この作品を見たソムリエが『言葉でしか伝えられなかった味を、イメージで伝えられる』と言った。この写真はリアル。広告のあり方が変わるかもしれない」と今後の可能性を示唆した。

日常の美しい 世界を知って

静岡県三島市に暮らしていた小学校低学年の頃、北山さんはおもちゃの顕微鏡をのぞき「不思議な世界がある」と直感。高校生のころは顕微鏡の画像を絵にもしていた。大学院で結晶科学を学び、その知識を生かして当初は化学物質を写真にしていたが、友人から「これは何」と問われた時に、聞き慣れない物質の名前を説明するのが「面倒くさくなった」と身近な液体を被写体にするようになった。
北山さんは「オドネルさんも村山さんも偶然に出会ってこうなった。日常の中にこんなにも美しい世界があることを知ってほしい」と話す。
写真集は100部限定で、北山さんの手元に10冊あり2万7000円で購入できる。北山さん電話83・5983

(浜秋彦)

投稿者: mgpress