飛躍「新時代へ」 松本山雅FC就任8年目反町康治監督 再び挑むJ1指揮官の策は

昨年、J2リーグで初優勝し、今年は4シーズンぶりにJ1で戦う松本山雅FC。指揮を執るのは就任8年目となる反町康治監督(54)だ。
昨季は最終節までもつれた大混戦を制して“登頂”を果たしたが、J2では指折りだったクラブの予算額や観客数も、J1の顔触れと比べれば下位。自前の選手を育てる下部組織も、U-18(18歳以下=高校年代)チームが3年連続で北信越リーグ昇格を逃すなど、立ち後れが目立つ。
前回、わずか1年で降格の憂き目にあった国内最高峰の舞台に、今度はどう挑むか。反町監督に今季の目標や臨み方、クラブの現状と課題などを聞いた。

反町監督に聞く
J1山雅 今季どう挑む

生き残りレースに勝つ

-パレードなど優勝・昇格行事でファン、サポーターとじかに喜びを分かち合った。
この地域ならではの盛り上がりだ。(クラブ運営会社の神田文之)社長の考えでもあるが、優勝シャーレ(銀皿)をスポンサーやファン・サポーターに触らせるのは珍しい。思った以上に喜んでもらえた。
-J1での目標は。J2との違いは。
目標は生き残りレースに勝つこと。「残留」というのは後ろ向きで悲しい響きなので、前回(2015年)は「トップ15入り」と言った。今年もよい表現を考えたい。
J1は、決めるべきところで決められる力が全く違う。J2なら「大丈夫」という状況でも、J1だと気づいたらやられていることが多々ある。
-今季の補強のポイントは。
全てのポジションで、限られた予算内で、昨年の主力を上回る選手を連れてこなくてはならない。J1で契約が切れる選手が思ったより少なく、競合が激しい。取り合いになると(資金力が豊富な)浦和などには勝てず、J2クラブの主力が中心になりそう。
昨年の開幕前、(藤田)息吹を大きく取り上げたメディアは皆無だった。目立たなくても優れた選手は評価されるべき。それがチーム力のアップにつながる。
-昨季のJ1をどう見たか。
下位はドングリの背比べ。小さな歯車のわずかな狂いで、負のスパイラルに入ってしまったのが柏(17位でJ2降格)だったかもしれない。
資金が豊富な名古屋は(山雅から)前田直輝らを補強して降格を免れた。長崎(18位で降格)は補強したくてもできなかった。そういう現実を考え合わせる必要がある。
-クラブとしての山雅の現状をどう捉えるか。
組織や人員、施設、育成組織のあり方など、国内トップリーグで戦うには甘さや課題が多い。前回の昇格時は現場(チーム)が先行し、会社も何とかそれについて行く─という感じだった。今は現場も会社も同じくらいの歩調だが、ここから独自性を出してやっていかなくてはいけない部分もある。
-地方の中小クラブのあるべき姿は。山雅はJ1制覇、アジア・チャンピオンズリーグ出場など大きな夢を描けるか。
端的に言えば「地域に根差したチーム」であることが理想だ。選手も育てて自給自足でやらなければならないが、今の山雅はそこが全く足りない。
夢を見るのは大いに結構なこと。英プレミアリーグで弱小のレスターが優勝(15~16年シーズン)したように、あり得ないことではない。
ただ、今のわれわれにそれが可能とは言えない。いま私が壇上で「今年の目標はJ1優勝」と口にしたら、みんな静まり返るだろう。遠い目標を掲げるのがよいかどうか。
山雅には良くも悪くもアットホームな部分がある。そこに甘えず、良い方向にどう生かすかが大事だ。
-育成組織は結果が出ていない。
県内ではトップだが、北信越や全国のレベルから見ればまだまだ。「お山の大将」に安んじている部分があるのではないか。より広い視野を持ち、しっかり鍛えなくては。それも進めながらJ1で戦わなくてはならず、非常に大変な作業だ。
-指導者としての自身の目標・理想は。
特にない。2回クビになると次の仕事がない世界。クビにならないように頑張るだけ。監督が変わればチームも変わる。その地域の良さ、アイデンティティーを尊重しつつ、やれることをやる。指導者としての姿勢は、そこに尽きる。

そりまち・やすはる 1964年3月8日、埼玉県生まれ。静岡・清水東高から慶応大を経て日本リーグの全日空に入社。Jリーグ発足後、横浜フリューゲルスと平塚(現湘南)でプレーし、97年に現役引退。2001年から新潟で5年間、09年から湘南で3年間監督を務め、いずれもJ1昇格を達成。山雅がJ2入りした12年に監督に就任し、J2入りから最速の3年で初のJ1昇格に導いた。08年北京五輪代表監督。

(長岩将弘)

投稿者: mgpress