松本の矢杉さん21日から作品展 豆本の世界広がる独自の発想と技術

わずか4・5センチ四方の本の中に、香水の瓶のイラストと、そのイメージのポエム─。ページを開くと、わくわくした世界が広がる豆本の「香水瓶画集」。
手掛けているのは、松本市の矢杉麻衣さん(25)。スペイン料理レストラン「壺屋松本店」(深志2)を1人で切り盛りしながら、豆本を作り、「舞茸(まいたけ)社」の名前で発行している。
バターの箱と思ったら、「本型バター」のタイトルで8個の銀紙の包みが入っている。開いてみると、バターを使った料理のレシピ本!「豆本」のイメージをも覆す発想と技術の高さに、感心するばかりだ。
21日から書店「books電線の鳥」(城東1)で、豆本を含めた作品展「矢杉麻衣のおいしい世界」を開く。

矢杉麻衣さん
松本市・豆本を作る料理店主

本も料理も作って共有できる

矢杉麻衣さんが作る「豆本」の中には、日常に感じることや、詩や物語など文芸の世界が広がる。
本物のバターと同じサイズの「本型バター」は、料理をする際、「バターの箱のサイズ感、デザイン、8個収まっているのが面白い。それぞれが本だったらいいな」という思いを1年かけて形にしたという。中の一つ(2.5センチ四方)を手に取ると「バターとバルサミコソース」のレシピが。このソースは経営するレストランでも使っているといい、「肉に合わせると本当においしいです」。
本に挟まる伝票(売り上げ・注文カード)を模した「本屋のレジから」(縦8センチ、横3センチ)には、書店員の心のつぶやきがつづられ、空想をかき立てる。自作の短歌を巻き込んだ短歌巻き煙草(たばこ)「TANKA」もユニークだ。

矢杉さんが製本に興味を持ったのは、小学生の時。もともと本好きだったのに加え、お経の豆本を見て「小さい本」作りに興味を持った。「本の構造を見て、手の中で作れるサイズの本を作ってみようと思った」
のりで貼ったり、色紙を使ったりと、最初は工作的に。その後、独学で勉強し、中学生の頃に豆本を特集する雑誌に作品を応募。その作品が、日本豆本協会(2011年設立)会長で「東京製本倶楽部」会員でもある田中栞さんの目に留まる。
「ちゃんと勉強しませんか」という誘いに、横浜まで出かけたことも。「独学で学んだことに加え、厚い本をとじるといった技術を教えてもらった」といい、矢杉さんの豆本の世界がさらに広がった。
豆本は、無駄を省いた言葉選びなど“引き算の美学”だ。小さいゆえに材料費はあまりかからず、好きな素材が使える、広い製本スペースが必要ない─といった利点がある。一方で裁断を1ミリ間違えたり、直角が少しでもずれると、かなり目立つという苦労も。「一からやり直しで、絶望的になることもありますね」

背中見てきた父と同じ道へ

信州大の人文学部を卒業したが、就活は全くせず、画家として活動しながらレストランを経営する父、良一さん(67、小諸市)と同じ道に進んだ矢杉さん。
画家の父、デザイナーの母という芸術一家に育ち、小さい頃から話や詩を作ること、絵を描くことが大好き。レストランを切り盛りする父の背中を見て育ち、「現在いるべき場所にいて、作るべき物を作っている」という感覚だ。
「思い描いている物をこの世に生み出せる素晴らしさ-。作らないと自分の中だけにあるものだが、本も料理も作り出すことで、いろいろな人と共有でき、感想をもらえる。とてもやりがいがあります」。手首から中指の先までが15センチという、小さい手から生み出される小さい本に、凝縮される矢杉さんの思い入れは深い。
「矢杉麻衣のおいしい世界」は2月10日まで(午前11時~午後9時・土日曜は5時、火、水曜定休)。昨年9~10月、スペインを旅行した際に食べた料理のスケッチや、豆本などを展示する。1月21日のオープニング企画ではピンチョス、ワインなどが楽しめる。期間中、製本のワークショップも予定する。問い合わせはbooks電線の鳥℡0263・50・9907

(八代けい子)

投稿者: mgpress