地元開催の全国大会へ気合 松商高「ウエイトリフティング部」女子5人

まずは深呼吸。バーベルをにぎり、深く腰を落とす。また一呼吸置いて、力いっぱい重力に逆らって引き上げる-。
重量挙げ(ウエートリフティング)の全国高校女子選手権大会が7月、松本市で開かれる。県内で開かれるのは初。女子選手にとっては、この大会が全国総体の位置づけだ。
県内で唯一「ウエイトリフティング部」がある同市の松商学園高校。初の全国大会地元開催に向けて、本年度は例年以上に女子部員の獲得に力を入れた結果、新入生の女子4人が入部した。いずれも初心者だが、唯一の先輩女子部員、2年の関根さくらさんのストイックな姿を追いかけ、日々自分の限界を高めている。
いよいよ勝負の年。5人とも気持ちを新たに、地元選手としての意地を見せようと張り切っている。

松商学園高ウエイトリフティング部女子
5人で奮起し競技広めたい

先輩の姿を見て「やってみたい」

松商学園高校ウエイトリフティング部に入部したのは、湯澤ののかさん、小島陽咲さん、名古屋美希さん、本澤佑菜さんの女子4人を含む8人の1年生だ。
1年女子は湯澤さん以外、中学までやっていた別のスポーツから転向。湯澤さんは幼少期からピアノや合唱に打ち込む音楽一筋の生活を送ってきた。
高校では勉強に専念しようと特別進学コースへ進んだ直後、たまたま練習場の前を通り先輩から勧誘を受け、「マネジャーくらいなら…」と思った。しかし部を見学すると気持ちが一変した。
普段は優しいのに、バーベルを前にすると目つきが変わる先輩の姿が心を打った。「楽しそう。自分もやってみたい」。競技者として部の門をたたいた。
練習は地道な筋力トレーニングが大半を占め、体重別階級制の競技ならではの増量・減量に苦しむこともしばしば。しかし、4人とも自分の実力が記録としてはっきりと示される競技の醍醐味(だいごみ)を楽しむ。入学時に比べ体つきもたくましくなり、名古屋さんは「それは強くなった証し」。小島さんも「昔から鍛えられた体に憧れていた」と笑う。
顧問の金井洋貴教諭(35)は1年の女子部員について「負けん気を持って熱心に取り組み、誰かが伸びると他も呼応して記録が伸びる」と目を細める。男子と同じ練習メニューをこなし、県外の強豪校に赴き共同練習するなど、着実な成長を見せる。順調にいけば、4人とも全国高校女子選手権の出場に必要な基準記録を近く突破できる見込みだ。

後輩がいたから平常心で臨めた

女子部員をまとめ、指導役も買って出る2年の関根さくらさん。「1年はのみ込みが早い。気を緩めたらすぐ抜かれる」。伸び盛りの後輩からは刺激を受けることも多い。
「みんながやっていないような競技に挑戦したい」と考え、高校で重量挙げを選択。それまでに打ち込んだ水泳やバレーボールで培った体躯(たいく)を生かして力をつけた。
全国デビューとなった昨年7月の全国高校女子選手権(群馬県)は雰囲気にのまれ、58キロ級で50人中34位という悔しい結果に終わり、しばらく不調を引きずった。
窮地を脱するきっかけになったのは、後輩の存在だ。11月に出場した全国規模の「レディースカップ第10回全日本女子選抜選手権大会」(茨城県)では、同行した小島さんが出番の直前まで積極的に話しかけてくれた。「おかげで緊張せず、平常心で臨めた」。高校の部の58キロ級で18人中16位だったが、大舞台で実力を発揮するこつはしっかりつかんだ。
「表彰台を目指す」と意気込む今年の全国に向けて、追い風も。昨年、国際連盟による全階級の体重区分変更があり、主戦場だった58キロ級がなくなり、より自分の状態に近く、調整しやすい55キロ級ができた。ライバルの多くが一つ上の59キロ級に流れる可能性もある。
世間ではマイナーなイメージが強い重量挙げ。本澤さんは「『バーベルを上げていればいいんだから、ウエートって楽なんでしょ』って友達からよく言われる」と不服そう。しかし、ロンドン五輪で銀メダル、リオデジャネイロ五輪で銅メダルを獲得した三宅宏実さんや、高校から競技を始め、競技歴4年でロンドン五輪代表になった八木かなえさんなど女子選手の活躍が目覚ましい競技だ。
関根さんは「開催県の意地を見せるため、女子5人で奮起して頑張りたい。地元の人にも注目してもらいたい」と願う。

【メモ】
第21回全国高等学校女子ウエイトリフティング競技選手権大会は7月19~21日、松本市総合体育館で開く。都道府県の大会など選考対象試合で階級ごとの出場基準記録を上回った選手が出場できる。バーベルを一気に頭上に上げる「スナッチ」と、最初に胸まで引き上げてから頭上に上げる「クリーン&ジャーク」の2種目で、それぞれのベスト記録を合計したトータルの重量で競う。インターハイでは女子の競技がなく、同大会がトップレベル。

(大山博)

投稿者: mgpress