「松本あめ市」で三才山地区の保存会と共演 信大生伝統神楽に新しい風

「デンデンツク
デンツク」
「ピーヒャラピー」
心地良い太鼓のリズムに、かすれたしの笛の音色が響く。羽織姿で懸命におはやしを奏でるのは、信州大の学生たちだ。13日、松本市の中心市街地で開いた「松本あめ市」で、同市三才山地区に伝わる「三才山小日向(こびなた)神楽」を地元保存会と共演。例年にない“大所帯”で盛り上げた。
江戸時代から受け継がれてきた同神楽は過去2回途絶えたが、住民有志が2004年に保存会を立ち上げ約20年ぶりに復活させた。しかし、その会員たちも年を取り、後継者の育成が課題だ。そこに現れたのが学生たち。ゼミ活動の一環だが、門外不出だった神楽の演奏技術を口伝えで学び、動画を見ながら繰り返して練習。伝統の神楽に新しい風を吹かした。

練習重ね地域の絆感じて

「三才山小日向神楽」に取り組んだのは、信州大人文学部芸術コミュニケーション分野の2、3年生男女12人。濱崎友絵准教授(音楽学)のゼミ生で、地域に残る伝統芸能を学ぼうと、本年度の授業で「小日向神楽」を研究対象に選んだ。
「松本あめ市」当日の本番は、歩行者天国でにぎわう伊勢町通りや中町、四柱神社の境内計3カ所で、三才山御射神社秋宮の例大祭に奉納される獅子神楽を披露した。学生たちはプレゼントされたちりめんの羽織を着て、緊張しつつも生き生きとした表情。2頭の獅子が舞う後方で、必死に稽古してきたおはやしを奏でて、あめ市のイベントを盛り上げた。

伝承の口唱歌「リコト」覚え

本番を控えた10日、同大松本キャンパス(松本市旭)人文学部の教室に、呪文のような不思議な歌声が響いた。「シャーウーシャララモトロシーモシャララー」
唱えていたのは、同神楽で「リコト」と呼ばれる口唱歌(くちしょうが)だ。おはやしで奏でるしの笛や太鼓には楽譜がないため、メロディーやリズムを独自の言葉にして覚え、これまで代々、伝承してきたという。録音や動画、情報はインターネット検索が当たり前な環境で育った今の学生たちにとって、この伝承スタイルは「ある意味カルチャーショックだったかも」と濱崎准教授はいう。
教えられた通りには簡単にできない。2年生の石渡夏妃さん(20)は「リコーダーのように吹けば音が鳴る、というわけでなく、しの笛は息の強さや口の角度でも微妙に音が変わり、加減が難しい」と苦笑い。竹で作られた笛は個体差があり、全員で同じ曲を吹いても音程を合わせるのに一苦労。
しの笛は6穴タイプで、同神楽で使っているものと同じタイプを探し、濱崎准教授が東京まで買いに行った。学生全員が自腹で購入。その熱意と本気度にひかれた保存会最年少で代表を務める柳※澤和也さん(30)が昨秋から学生を指導する。分かりやすいように教則本も書いた。
伝統の祭り、神楽は神聖なものとして、これまで外部の人に教えることは御法度だった。しかし、「今はそうもいっていられない。会員の高齢化が進む中、廃れてしまっては意味がない」と柳※澤代表。毎週、信大へ稽古に出向き、おはやしやしの笛の吹き方などを伝授。学生はリコトを耳から覚え、とにかく柳※澤さんの指の動きや口元など演奏をまねた。
その様子は動画で記録に残し、インターネットを介してゼミ内で共有。柳※澤さんが指導に来られない日は動画を見て練習するなど、“技術革新”も進んだ。

新鮮な体験で故郷を見直す

「松本あめ市」を終えて、活動は一区切りとなる。
副ゼミ長の3年生、戸田伊城さん(21)は吹奏楽部で打楽器の経験があることから神楽の太鼓を担当。「ドン、ツク、テンなど音で覚えて演奏するのは新鮮。地元の静岡では、こういった神楽がほとんど廃れてしまったので、ぜひ地域に残してほしい」と願う。
名古屋市出身の3年生、長谷川七海さん(21)は「地域の伝統芸能に少しでも携われたことがうれしい。直接、後継者にはなれないが、覚えたしの笛は一生忘れません」。3年生でゼミ長の宮田紀英さん(21)は「神楽を通して地域の絆を感じた。自分たちの故郷を見直すきっかけにもなった」と話した。
学生たちは3月までに、学んだことを研究報告書にまとめる予定だ。
(高山佳晃)

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投稿者: mgpress