松本衣デザイン専門学校の太田さん 車椅子2人とパリへ

「国内旅行と同じ感覚で、車椅子の人とパリに行こうと思ったの―」。松本衣デザイン専門学校(松本市中央2)代表理事の太田正子さん(69、安曇野市)は昨年11月末、妹の野中恭子さん(61、東京都=松本市出身)一家3人と8日間のフランス旅行に出掛けた。うち2人は車椅子が必要で、周囲から「太田さん、随分と冒険するねー」と驚かれたという。
パリで移動に使ったタクシーはワゴンタイプが多く、車椅子2台が普通に乗せられた。飲食店もショップも「入れない」場所はほとんどなかった。途中で介護タクシーも利用するなど、自分も楽しみ、楽することを心掛けた旅行。日本とフランスの良いところも、遅れているところも発見。「行ってみればなんとかなった」体験談を、太田さんに聞いた。

ごく普通の対応心地よく
行って何とかなることも

若い頃、パリに滞在していた妹の野中恭子さんと「もう一度一緒に行きたいね」と話していた太田正子さん。筋ジストロフィーで車椅子が必要な恭子さんとめいの麻衣さん(33)とは、たびたび国内を旅行していた。その延長で「じゃあ海外も行ってみよう」と思い立ち、タイミングよく恭子さんの夫の知則さん(67)も同行できることになった。
まず、松本市内の旅行会社に相談すると「車椅子の場合は、東京の本社に相談を…」と言われ、「え?普通のことじゃないの?と逆にやる気になった」と笑う。
東京の旅行会社とメールでやり取りし、航空券やホテルの手配を頼んだ。勧められて、ちょっと値段は高いが「プレミアムエコノミー」を予約したのが正解だった。成田空港で搭乗前、航空会社のラウンジで食事ができてリラックスしたり、機内の座席はゆとりがあり、突然のトイレもスムーズに介助できたりした。空港内のスタッフの対応も丁寧。数万円の差は大きかったという。
そしてパリ。「日常を楽しむ」のが目的で、太田さんが行きたかったカフェやレストラン、美術館、商店に出向いた。パリの街は歩道から店の入り口まで数段あることが大半で、バリアフリーではない代わり、店に入ろうとすると「どこでも店員が、ごく自然に車椅子を持ち上げてくれた」。美術館や博物館などの施設は車椅子利用者と介助者は無料。案内もスムーズだった。
旅の途中には、介護タクシーとガイドを頼み、1泊2日で壮大な修道院が有名な仏西部の世界遺産モンサンミシェルへ。「ずっと車椅子を押していると、こちらが疲れちゃうからね」と太田さん。日本人が経営するサービスで、日本から事前に手配した。
半面、全体的に車椅子用トイレが少なく、表示も分かりやすくはなかった、と恭子さん。店の前の歩道にごみ箱が出ていて、車椅子が通れるスペースがなかったことも。ある店で「ブラウスを買いたい!」と思ったが、高い段差があり店内も狭かったので、太田さんが商品を借り、外で待つ恭子さんに見せる一幕も。
古い建物は入れない場所もあった。日本と比べ、パリの地下鉄の駅はエレベーターが少なく、利用を断念。バスも「車椅子は1台のみ」と断られたことも。市内の移動は主にタクシーと歩きだった。
不便なことはあったが、フランスで感じたのは、車椅子でも「周囲の視線が気にならない」ことだった。タクシーもごく普通に車椅子を乗せた。「日本もずいぶん変わったと思うけれど、フランスの温かくもなく冷たくもない対応が心地よかった」と、何百枚もの写真を見ながら旅を振り返る。
恭子さん自身は「段差が多く、歩道は石畳だったので押す人が大変で申し訳ないと思った」と言うが、「お店も空港も介助サービスもみな親切で、楽しかったのでまた行きたい」と話す。
太田さんが今回の旅で感じたこと-。車椅子だから、障害者だから、とひとくくりにしがちだが、それぞれにできること、できないことがある。大きなユニバーサルトイレがよい人もいれば、恭子さんと麻衣さんは壁に手すりがあれば伝い歩きができるので、逆に狭いトイレが使いやすいこともあった。
ニーズはそれぞれ違う。準備は必要だが、心配しすぎてもいけない。行ってなんとかなることもたくさんあった。一番伝えたいことは「車椅子2人を連れても、海外に行けるよ。行く先で道は開けるよ!」
(井上裕子)

投稿者: mgpress