土蔵再生「Listリノベーションプロジェクト」

築150年近い古い蔵を再生する取り組みが、松本で進んでいる。名付けて「Listリノベーションプロジェクト」。同市大手5の善哉酒造に隣接する土蔵を、テナントハウス「List」に生まれ変わらせようという取り組みだ。リスと設計室(同市沢村1)の1級建築士、横山奈津子さん(35)が主体で、横山さん自身もメンバーである空き家プロデュース集団「そら屋」が協力する。協力してくれる人と一緒に片付けや大工仕事をする「そら仕事」にも取り組んでいる。
「正面の玄関がかわいい」と横山さんが一目ぼれした建物。多くの人に愛され、残ってきた。「設計士として古い建物を再生し、使うのも事業の一つ。自分のやりたいことを多くの人に分かってもらえるのではないか」と期待を込める。

身銭切って残すと決断

改修する土蔵は、1874(明治7)年に建てられたという。2階建てで、延べ床面積は約100平方メートル、敷地面積は50平方メートル。住居として使われていたため、一見では蔵と分かりにくいが、横に回るとなまこ壁の跡が残る。「入り口扉の古い感じ、扉の前に立つまでの約60センチ上がる部分に3段の階段があること。そのたたずまいがかわいくて」と、1級建築士の横山奈津子さんはひかれた。
当初は住居用にと考えたが、瓦が落ちたり、雨漏りしたりとそのままでは使えない状態。所有者が解体する予定もあった。修理するにも費用はどうするかといった問題が出てきたが、横山さんが屋根や外壁、構造の修理費を負担することで決着。責任を持って管理する代わりに、格安で貸してもらうことにした。「身銭を切って残そうという人がいないと残らない。築145年という大事な建物を壊すのは忍びない」と横山さんは決断した。
1階を店舗に、2階にキッチンを置いてシェアハウスにと予定したが、水回りを整えるには費用がかかりすぎると、そら屋に相談。2階の住居は諦め、物販のテナントを入れることにした。
これまでにシロアリの被害で腐っていた柱を10本交換。そら屋が「片付けからDIYまで、みんなでわいわい空き家作業しよう」と呼びかけて、1月13日に開いた「そら仕事」には14人が参加。バルコニーのさび落とし、2階の床の穴をふさぐといった作業をした。そら仕事は3回行う予定だ。
参加者は県外から移住した人が多い。横山さんは「仲間をつくりたい、どういう人が松本にいるのか知りたい、新しくできる場所に関わりたいという思いがあるのではないか。3回とも参加したいという人もいる。移住促進もそら屋の目的の一つ。一緒に仕事をすることで、移住者が地域に溶け込む機会になれば、活動する意義がある」と話す。

移住者らも出会い求め

1階に入ることが決まった「山山(さんさん)食堂」の高橋英紀さん(43、松本市元町1)も、移住者の1人だ。「山が好き。山のそばに住みたい」と2017年2月、松本に引っ越してきた。富山県の山小屋に10年勤めていた経験もあり、自分の店を持ちたいという夢を今回かなえた。
「周辺も静かで、建物の雰囲気もよかったので、借りることにした。古い建物はそれだけで味がある。残せる部分は生かしながら、山関係の物も置きたい」と話す。
蔵がある餌差町は、かつて鷹(たか)狩りの鷹に餌を取る餌差しの人が住んでいた場所という。女鳥羽川の北、城下町の中心から山辺方面に向かう山家(やまべ)道が通る。蔵の隣に善哉酒造、女鳥羽の泉があり、外国人観光客も多いという。蔵の再生で街ににぎわいを増し、老若男女いろいろな人が交流できる場所にと期待する。横山さんは「この通りには空き家が何軒かある。今回のプロジェクトを皮切りに、うまく活用し、楽しい通りになればいい」と力を込める。
そら仕事の2回目は10日、3回目は3月10日で、両日とも午前9時~午後3時。「山山食堂」の賄いが付く。参加費無料。定員10人程度。要予約。汚れてもいい服装で、タオル持参。参加申し込みはそら屋のホームページ(「そら屋」で検索)。
(八代けい子)

投稿者: mgpress