松本市歯科医師会学術部員平林正裕歯科医師に聞く 防ごうオーラルフレイル

食事中にむせたり、食べこぼしたりすることが増えてきた|。こうしたささいな症状が積み重なり、口の機能の低下や食べる機能の障害へと進んでいく一連の現象、過程を指す「オーラルフレイル」に関心が高まっています。オーラルフレイルは全身の機能低下へとつながるだけに、加齢に伴う衰えと見過ごすのではなく、早めに気付き、適切な対応をすることが大切です。松本市歯科医師会学術部員の平林正裕歯科医師(36)に聞きました。

―オーラルフレイルとは
オーラルは英語で「口腔(こうくう)」、フレイルは「虚弱」です。加齢に伴い少しずつ体力や筋力が落ちてきますが、口の機能の軽微な低下の積み重ねが全身の衰えに関わってくるという考え方で、数年前から東京大学高齢社会総合研究機構の辻哲夫特任教授、飯島勝矢教授らによって研究が進められています。
一連の現象と過程は4つの段階に分かれます。
▽第1口の健康への関心が低下し、虫歯や歯周病などを放置して歯を失うリスクが高まる。
▽第2かめない食品が増え、滑舌が悪くなる。食べこぼし、むせる、食欲低下など「年のせいかな」と思うようなトラブルが続く。
▽第3口腔不潔や乾燥、咀嚼(そしゃく)機能・かみ合わせ力の低下、口や舌、嚥下(えんげ、飲み込む動作)機能の低下など口腔機能が低下。これにより十分な栄養が取れなくなったり、人との交流を避けるようになったりする。
▽第4食べる機能の障害「摂食嚥下障害」「咀嚼障害」になる。要介護状態の人に多く見られる。
第4段階になると治すのは難しく、第3段階までの早期に適切な対応が必要です。
―オーラルフレイルを放っておくとどうなるか
千葉県柏市で、介護認定されていない高齢者約2000人のオーラルフレイルと身体の衰えの関係を調べた研究があります。
口の機能の衰えを示す▽自分の歯が20本未満▽滑舌の低下▽かむ力が弱い|など6項目のうち、3つ以上該当した16%の人をオーラルフレイルとして継続調査したところ、年齢や病気などの要因を考慮しても、フレイル(身体虚弱)やサルコペニア(筋肉量が減り筋力や身体機能が低下)、新たな介護認定、死亡に至るリスクが、オーラルフレイルでない人の約2倍も高いという結果でした。
―診断や予防は
オーラルフレイルのチェック表=図=を参照してください。
昨年4月に「口腔機能低下症」が病気として認定され、歯科医による保険対応の診察、訓練ができるようになりました。心当たりがある人は、かかりつけの歯科医に相談してみてください。
予防は、口への関心を持ち、なるべく自分の歯を残すこと。かむ力が落ちないようしっかりかみ、健康的な食生活を意識して低栄養にならないようにすることです。また、外に出ておしゃべりを楽しむなど、口腔器官をよく使うことも大切です。
口の健康を保つトレーニングとして開口訓練、あいうべ体操、唾液腺マッサージなどがあります。筋肉や身体能力は40代ごろから衰え始めます。オーラルフレイルを予防するために日常的に訓練し、健康な生活を送ってほしいです。
ご自身の歯に関心を持ち続け、歯を残すためにかかりつけ歯科医を持って定期的に検診を受けることもお勧めします。
(井出順子)


投稿者: mgpress