公募展「老いるほど若くなる」入賞の2人に聞く 描く喜び人生映し出す作品

70歳以上を対象にした公募展「老いるほど若くなる」の入賞、入選作品展が3月2日~4月7日、松本市美術館(同市中央4)で開かれる。
2年に1回開き8回目。全国43都道府県から過去最高の589点が寄せられ、女優の檀ふみさん、菅谷昭市長、小川稔館長の3人が110点を選んだ。
応募者は70~97歳。「人生100年時代」と言われる今、90歳以上の応募も多い。それぞれの人生を映し出す作品は時間や思い、経験が重なり、静かながらも強いエネルギーに満ちている。
約8割が県外からの応募だが県内から122点が集まった。県内応募者で最も上位の準グランプリに選ばれた小松さだ子さん(96、同市桐1)と、MGプレス賞を受けた柳澤房芳さん(96、同市県2)を訪ね、創作について聞いた。

経験や思い強いエネルギーに

楽しくて夢中大作を次々と
小松さだ子さん

すがすがしい白馬連峰や、生命力あふれるダリアの花|。100号のキャンバスを彩る作品の数々からは、絵を描く喜びが伝わってくる。
準グランプリとなった小松さだ子さんは「小学校の時から絵だけは褒められた」と話す。本格的に始めたのは50代近く。「子どもから手が離れたら寂しくて寂しくて…。『絵を描いてみたら』と長男に勧められたのがきっかけ」という。
自己流でなく基礎から習いたいと週に1回、教室に通った。日本水彩画会などにも入会し、公募展に向け100号の大作を次々と手がけた。「楽しくて夢中になり、徹夜で描くこともあった」。公募展入選や個展開催、作品の寄贈など精力的に取り組んだ。
幼い頃からぜんそくで体が弱く、小学校の遠足では担任教諭におぶってもらった。入賞作の「レースを敷いた静物」に描いたピンクの花瓶は、その教諭が制作した思い出の品。恩師が生きているうちに絵をプレゼントできなかったのが悔やまれるが「受賞を天国で喜んでくれているかな」と思いをはせる。
「老いるほど若くなる」展にはこれまで3回、出展し入賞は2回目。「“いたずら”で描いた絵を拾ってもらうだけでありがたい。とにかくびっくりした」という。
昨年、腰を痛め絵筆を持つ回数も減ったが、「これからは孫の絵をのんびり描きたい」とほほ笑む。

「廃材」テーマ再生へ願いも
柳澤房芳さん

MGプレス賞の柳澤房芳さんの作品は「屈しないぞ自然災害」。流木や車が積み重なり、土ぼこりや泥の匂いが漂ってきそうな市街地で重機を動かす人間がかすかに見える|。昨年7月の九州北部豪雨を受け、「泥まみれの家を必死に片付けようとする家族の映像をテレビで見て心を動かされた」と、復興を願って描いた作品だ。
郵便局を定年退職し、第2の人生として絵画教室に通い始めた。講師は一環して「廃材」をテーマに。北アルプスなど風景を描きたかった柳澤さんは数カ月後に行き詰まったが、「一番大事なことは続けていくこと。続けると何かが開ける」という講師の言葉を受けのめり込んだ。
廃材はリサイクルされ再生する。自分は人間として次世代に何を残せるか。自問自答しながらキャンバスに向かったという。
そんな柳澤さんの創作の喜びは「作品を贈って喜んでもらえること」。これまで郵便局や清掃施設などに贈呈したほか、通うデイサービスでは年末、職員に作品をA4サイズにカラーコピーしプレゼントするのが恒例だ。
同美術展には第1回から出展し、入賞は2回目。「2度あることは3度ある。今は100歳時代なのでまた挑戦したい。気持ちだけは負けません」と力強い。

「老いるほど若くなる」美術展は午前9時~午後5時。大人600円(高校大学生と70歳以上の市民300円)。月曜休館。同館電話0263・39・7400

(井出順子)

投稿者: mgpress