誰でも集える「憩いの場」運営 社会とつながり可能性を広げて

施設でもない、事業所でもない。障害のある人、生きづらさを感じる人、地域の人などが気軽に集まれて、やりたいことを持ち寄ったり、ボランティア活動に取り組んだり…。松本市筑摩にある「あったかユニットほくほく堂」はそんな場所だ。
管理人は、矢口修さん(65、松本市宮渕)。「ハンディがある人たちが、周りから支援されるだけになると、やれることも少なくなる。身近な場所で、自分たちのアイデアを生かせる拠点がほしい」という思いで運営する。
昨年8月から毎月第1金曜日、地元の人が集まりやすいようにと「サロンおいでや」を始めた。いろいろな人が集まることで、周りの人や社会とつながり、障害のある人の可能性も広がる、と矢口さんは思っている。

催し多彩にサロン開設

松本市筑摩の「あったかユニットほくほく堂」は、2015年、精神障害の当事者3人が生活訓練事業所内に立ち上げた。その後、事業所は閉鎖、拠点がなくなったため、場所を借りあちこちで開催していたが、18年4月、現在の場所にオープンした。
2階建ての建物を借りて、1階はオープンスペースで貸し出しやイベントを開催、2階は利用者の共用スペースで、休憩や相談ができ、生きづらさを抱えた人の憩いの場だ。ストレッチ会、ボードゲーム大会、読書会なども開いている。精神障害者のための元気回復行動プランを策定することもある。
オープンスペースで2月に開いた「サロンおいでや」には、15人ほどが集まった。ほくほく堂と市中央南地域包括支援センター、地域の公民館など5団体が連携して開く。お年寄りがゲームに興じ、お茶を飲みながら会話を楽しむ。保健師による血圧測定や健康講座など、盛りだくさんだ。
中島岩雄さん(87)・香都子さん(84)夫妻(筑摩4)は「地域にこういう場はなかなかない。とってもいいね。久しぶりに会う人もいて、楽しい」とほほ笑んだ。
1月にはフリマネット信州がフィリピンに発送する縫いぐるみや楽器の荷造りを、ほくほく堂のメンバー、地域の人など9人が手伝った。圧縮袋に入れ、掃除機で空気を抜いたり、ダンボールに詰めたり。縫いぐるみ150個、鍵盤ハーモニカなどの楽器80台などを発送した。

生きづらい人心安らぐ場に

管理人の矢口修さんは30代のころ、精神障害のため東京の病院に入院した。「正社員だったが、精神科に通っていると伝えたその場で、アルバイトにされ、その後結局辞めてしまった」という。「精神障害者は、周囲から全然理解できない人というように見られがち。普段は健康な面が多いのに、レッテルが貼られることで、いい面に焦点は当たらず、気付いてもらえないケースが多い」と話す。
週1回程度、ほくほく堂に訪れる30代後半の松本市内の男性は「世間では冷たい目で見られることが多いが、ここは何もしなくても心が安らぐオアシス」。松本市笹賀の37歳の男性は「たまにしか来ないけど、リラックスできる。みんなと話をするのが楽しい。家でものんびりできないので、ここ以外でボーッとするところがあまりない」という。

格安の家賃ということもあり、これまでは利用料で運営費を賄っていたが、「灯油など、冬の燃料がかさみ、今は蓄えを少し崩している」と矢口さん。イベントやスペースの貸し出しで運営費を捻出していく。
17日には精神科長期入院の現実をユーモラスに描いたドキュメンタリー映画「オキナワへいこう」を上映。11~17日は同映画監督の大西暢夫さんの写真展「ひとりひとりの人」を開く。
「ゆっくり歩いている人は、スピードが速い人が気付かないものが見えていることもある。歩く人の目線が社会に反映されることで、社会とつながっていける。病名でくくるのではなく、一人一人の可能性を見てほしい。そういったところをたくさん引き出せる場所になればいい」と矢口さんは力を込める。

火曜定休。午前10時~午後4時。初回利用は1日300円。2回目以降は200円。1階の貸し切りは5人以上、1人300円。サロンおいでやは午後1時半~、300円(お茶とお菓子付き)。映画「オキナワ―」は午後1~4時、1000円、写真展は200円。映画は15、16日に塩尻市、松本市でも上映会を行う。

(八代けい子)

投稿者: mgpress