雪の中からほほ笑むフクジュソウ(大町市平)

雪に埋もれ淡い日差しを集めて咲くフクジュソウ。残雪の中に温かな春の領域をつくる=ニコンD5、ニコンAFマイクロニッコール105ミリ

癒やしを届ける小さな春の窓

暖冬傾向で記録的に雪が少ない今冬の松本平。北端の木崎湖に近い大町市平地区の雪の中で、ほほ笑むように咲くフクジュソウに出合った。ほほ笑みのステージは、残雪に埋もれる南側の斜面の土手。2月17日午前に撮影した。例年より1カ月以上早い。
フクジュソウの花がいち早く周りの雪を解かし、小さな春の領域をつくっている。開いた雪の窓の中で、金杯を思わせるような花の姿が癒やしの世界へいざなう。
レース状に残った雪に包まれて咲く株を見つけ、マイクロレンズで迫った。雪の中で咲く生命力の強さが伝わってきた。
花は日が当たると一斉に開き、陰ると早々と閉じる。他の野草に比べ光の明暗に機敏に反応する。花びらはパラボラアンテナのように開き、淡い春の光を集めて咲く。その角度が絶妙で、花の中心に温もりを集め、大切な雌しべを守っていることにも驚かされる。寒さの中で、命をつなぐ賢さを備えていて不思議だ。
学名は、アドニスラモサ(Adonisramosa)。キンポウゲ科に分類され、世界には30種以上があり、日本固有種もある。漢字では「福寿草」。旧暦の元旦(2月初めごろ)に咲くことから「元日草」とも呼ばれ、春を告げる花として知られる。花言葉は「幸せを招く」「永久の幸福」である。
(丸山祥司)