日本棋院所属王銘琬九段に聞く 純碁で認知症予防


認知症の予防や進行の抑制に重要な要素の一つ「脳の活性化」。その方法には読書やパズル、脳トレゲームなどいろいろあるが、囲碁のゲーム性はそのままにルールを分かりやすくした「純碁」に関心が高まっている。松本市は2月、純碁の提唱者で日本棋院所属の王銘琬(オウ・メイエン)九段(57、東京)を講師に招き、純碁講座を開いた。取材をしながら記者も初体験し、その効果と魅力を探った。
★純碁とは
囲碁は通常、縦横19本ずつ線が引かれた路盤で、黒と白の碁石を打ち合い、自分の石で囲んだ領域の大きさを争う。これに対し純碁は、最後に「盤上にある石の多い方が勝ち」という明快さが売り。碁盤も線が少ない7路盤から始められ、短時間で一局打てる。
★基本ルール
(1)碁盤の交点に黒から交互に一手ずつ打つ。
(2)相手の石を自分の石で囲めば、その石を取ることができる(例外あり)。
(3)これ以上打つ所(打ちたい所)がなければパスできる。
(4)お互い続けてパスしたら終局。
(5)盤上にある石を数え、多い方が勝ち。
王九段は「実質的に『石を取る』ことしかないので、子どもからお年寄りまですぐに遊べます」と言う。
国内外で純碁を普及し、昨年だけで約1000人に指導。そのほとんどが「自分でも碁が打てる、と実感できるようになった」とし、純碁を学ぶことで、囲碁で絶対に取られない形の「二眼(にがん)」=図1=や、「生き」=図2(一例)=の形を覚えられる。囲碁の基本が身に着くので、違和感なく囲碁に移行できるという。
★囲碁の効果
東京都健康長寿医療センター研究所の医師が昨年、囲碁が高齢者の認知機能に与える影響を調べたデータを米国の認知症関連の学術誌に発表した。
その調査は、認知症の疑いや症状のある施設入居者(平均年齢89歳、囲碁未経験)を対象に、囲碁入門講座(週1回1時間、計15回)を受けるグループと、受けないグループに分け、注意機能やワーキングメモリー(複雑な情報を処理する能力)の変化を測定。
結果は、受講した人たちには注意機能などの維持・向上が見られ、受けなかった人たちは低下した。脳のCT検査や知能テストでも効果は顕著で、「囲碁が認知機能に好影響を与えることが学術的に証明された」と王九段。
ただし、コンピューターと対局した時の脳への効果は、対人で行った時の半分程度だったという。小さな碁石をつかんで碁盤に置く動作や、目の前の相手をうかがいながら打つ手を考えることが、認知症予防に一層有効のようだ。
★誰でも気軽に
大手公民館で開いた講座には市民ら75人が参加した。ほとんどが碁石に触れるのも初めてで、夫と参加した柴佐代子さん(73、島立)は「頭を使うので、認知症の予防にいいかも。将来のためにも夫婦で早速取り組みたい」。初めて対局したという蟻ケ崎西町会長の古市昭太郎さん(80)は「短時間で覚えられ、誰でも気軽に始められるのがいい。町会でもぜひ純碁を広めていきたい」と話した。
市では今後、純碁を認知症予防策の一環として福祉ひろばなどで取り入れ、普及に努めていくという。
★プロと対局
講座終了後、本因坊2期、王座1期のタイトル獲得経験がある王九段に手合わせをお願いした。記者は囲碁の取材経験はあるが対局は人生初だ。
先に石を3つ置けるハンディをもらいスタート。「石はつなげた方が強くなる」とのアドバイスをもらい打ってみるが、瞬時に次の手を打たれ次の一手が出ない。それでも最後はこつをつかんで25対18で勝ち(勝たせてもらい)、日本棋院認定の29級の認定状をいただいた。
そのうれしさもあり、家に帰ると早速スマートフォンのアプリで20局以上楽しんだ。先を読み、次の一手を考える時間は、確かに脳がフル回転している気がする。新しい趣味になりそうだ。
(高山佳晃)


投稿者: mgpress