松本で聴覚障害者の成人を祝う会

「久しぶり!」「元気だった?」
振り袖やスーツ姿で再会を喜ぶ声が上がる成人式。2日、松本市松南地区公民館「なんなんひろば」で開いた「手話で祝うはたちの集い」でのやりとりはほとんど手話。聴覚障害のある新成人のお祝いに10人が出席し、家族や恩師ら約150人と、成人を祝った。
3回目となる今回の実行委員は「地元の成人式は友達がいなくて-」と昨年度の成人式を欠席した青木梨夏子さん(21、安曇野市)と、地元の成人式に出たものの「手話通訳で内容は分かったが、友達もおらずつまらなかった」という青木良仁さん(20、諏訪市)。共に聴覚障害者だ。先輩のアドバイスを受けながら準備してきた。
再会と成人を喜び祝うと同時に、悩みを相談したり助け合うネットワークも広がった。

より良い社会へ力強く宣言

「手話で祝うはたちの集い」は、4年前に初開催。以来、2学年合同で2年ごとに開いている。県内にはろう学校が2校で、卒業生は知り合いが少ない市町村の成人式に出席しにくいという事情から開催。ろう学校出身者に限らず、聴覚に障害がある人がつながり合う場にもしたいと広く呼びかけている。
実行委員の青木良仁さんは紋付き、はかま、青木梨夏子さんは華やかな振り袖で登場。手作りの式典は「はたちの誓い」や茶話会、抽選会など和やかに進行した。
新成人が1人ずつ登壇して発言する時間も設定。
「日頃の生活はコミュニケーションが難しいことが多い。恩師や仲間に会えてうれしかった」
「母校に教育実習に行った。長野県に戻って教員になりたい」
「聞こえないことに悩みや苦しみを抱えた人に何ができるかを考え、行動したい」
「懐かしい顔に会ってほっとした」と笑顔を見せながら、力強い発言も。8人の発言後、次の内容に移ろうとする両実行委員に「2人は?」と会場中が突っ込み。「私たちも言うの~?」と慌てる2人に笑いが起きた。
このほか、実行委員の2人がインタビューして作った「聴覚障害者協会について」の上映や、県聴覚障害者協会の井出萬成理事長の話などで、活動の歴史を学んだ。
「ろう者の先輩は差別と闘い、権利を守るために『ろうあ運動』を展開してきた」と井出さん。「運転免許の取得が認められた」「法律がないので活動して『長野県手話言語条例』ができた」など声を上げ続けて社会が変わったことや、「若いみんなの力を合わせ、要求を伝えていくことが大切」と呼びかける言葉を表すスクリーンや手話に、会場中が見入っていた。
「誓いのことば」では一ノ瀬昌志さん(21、長野市出身)と相澤真衣さん(20、安曇野市出身)が「先輩たちのおかげで今の暮らしがあると感じた。思いを受け継ぎ、ろう者の自立と社会参加に向けて頑張りたい」「聞こえないことに誇りを持ち、仲間や先輩たちと共により良い社会をつくっていくことを誓います」と手話で力強く宣言した。

つながり合う場広く呼び掛けて

実行委員2人は昨年から準備を始め、該当者の連絡先を調べ、メール等で連絡した。ろう学校に通っていない人も県聴覚障害者協会のホームページなどで広く呼び掛けた。前回の実行委員がアドバイスをしたり練習につきあい、当日も運営を手伝った。
集いを終え「連絡先を調べたりビデオを編集したり、準備は大変だったけど今日は楽しかった」と実行委員の2人。梨夏子さんは「今回初めて恩師の一言の時間も作ってよかった」と笑顔。良仁さんも「仲間や先輩、先生方も大勢来てくれ、集えてよかった」と充実した表情を見せた。
初回から関わる県聴覚障がい者情報センターの上嶋太所長(52、梓川)は「新成人が集まったことも、先輩が親身に手伝うつながりもうれしく、この集いが続いてほしい。聴覚障害者が差別に苦しむ現状もあり、『応援したい』という気持ちを多くの人が持ってくれれば」と話した。
(上條香代)

投稿者: mgpress