上高地線を走る1日限りの書店 4月14日「BOOK×TRAIN」

BOOK×TRAIN 走る!しましま本店
電車で読書 懐かしい風景再現

アルピコ交通上高地線の電車1編成が4月14日、1日限りの本屋さん「BOOK×TRAIN 走る!しましま本店」に変身する。
同線新村駅構内に保存されている古い電車の中などで、古本市を開いてきたイベント「しましま本店」が、今回初めて動く電車を会場にする。本と出合うだけでなく車両の揺れ、車窓の風景、そこで生まれる人との出会いなどにも目を向け、電車を楽しむ空間の一つと思ってもらえたらと期待する。
中心になって取り組むのは自営業の太田岳さん(28、木祖村)。子どもの頃から電車、本が大好き。そこに、大学で地域づくりを専攻した経験をプラスしての企画だ。古書店などの仲間と準備を進め、「松本の東西を行き来し、人との交流、文化を生み出せたらいい」と力を込める。

テーマを持って人が集まる場を
「しましま本店」を企画・運営する太田岳さんは、子どもの頃から電車、特に緑色で丸みのある形の5000形(愛称・青ガエル)が大好き。上高地線と関わるようになったのも、その電車がきっかけだった。
旧松本平タウン情報の2007年の記事で、引退した5000形が新村車両所に留置されていること、その車両を地域のコミュニティーの場に活用する「古い電車で新しい語らいの会」が発足したことを知り、翌年、松本蟻ケ崎高2年の時にメンバーに。活動に参加する中で「いろいろな人が電車の中で話をしているのを目の当たりにし、面白いと思った。コミュニティー、そして、地域づくりにも興味を持った」
高崎経済大学(群馬県高崎市)地域政策学部地域づくり学科に進学。富岡製糸場(同県富岡市)が世界遺産に指定される前、街中の回遊について考え、マップ、案内板などを作った。「ちらしなど、デザインの大切さを感じた」と太田さん。東京の国立本店(国立市)という、本をテーマにしたコミュニティースペースを知ったのもこの頃だった。「地元に帰り、テーマを持って人が集まる場所ができたらいいな」と考えた。
テーマは本。そして場所は電車。そして、人が集まる場所を生み出すにはどうしたらいいか?松本市の浅間温泉で古書店「おんせんブックス」を営む越智風花さんに相談し、越智さんの提案でブックマーケット形式で出店者を募ることに。2015年11月、上高地線を舞台に「線路の上の書店」を開くブックイベント「しましま本店」がスタートした。
太田さんの手元に、1923(大正12)年に筑摩電氣鐵道(現・アルピコ交通)が発行したパンフレットがある。浅間温泉から旧浅間線で松本市街へ、松本から島々線で島々へと、1本の線で表現されていることに興味を持った。「山と温泉が鉄道で結ばれ、松本の東西で交流が盛んに行われていたのではないか」と太田さん。「しましま本店」には、上高地線が走る市の西側について、関心を掘り起こす狙いもある。

唯一無二の景色本を片手に眺め
古い「青ガエル」は新村駅に保存されている。そこでイベントを開催してきたが、老朽化が進み、大勢の人が入れなくなった。「走る電車でやってみたい」という声も出て、今回の企画が実現した。「田園風景の中、2両の電車が走り、背後には3000メートル級の山々の稜線が見える。ありそうでどこにもない風景が上高地線の魅力。沿線住民には『ここには何もない』という人もいるが、唯一無二の風景だということを発信したい」と力を込める。
スマホに押されがちだが「20年前は、電車内で本を読む人が多かった。電車と本はマッチする。イベントをきっかけに車内の読書人口が増えたら面白い。そうした文化をつくり出せたらいい」。
当日は、松本-新島々駅間の14.4キロを40分ほどかけてゆっくり走る。出店は「雨だれ書房」(松本市)、かえるBOOKS(安曇野市)、「無人駅をめぐる本屋」(東京)など12組。喫茶の出店もある。
往路は松本午前9時38分発、新島々10時19分着。復路は午後3時34分発、4時14分着。乗車は締め切り済み。午前10時半~午後3時、新島々駅に停車中の車内は「線路の上のブックマーケットin新島々」になり、誰でも利用できる。オリジナル手拭い(1000円)も販売する。
(八代けい子)

投稿者: mgpress