農家の主婦2人で「パンの日」秋除き月1回営業 得意なことで地域に喜びを

桜井智代さん、倉橋茜さん(松本市)

リンゴなどの果樹畑が広がる、松本市今井地区にある「ワークショップカフェももっ茶」。月1回、店内にはパンの焼ける香ばしい匂いが立ち込め、お昼には地元の高齢者がパンとコーヒーでゆっくりランチを取り、夕方には仕事や保育園の迎え帰りの主婦でにぎわう。
今井の果樹農家の主婦、桜井智代さん(37)と倉橋茜さん(40)が開く「パンの日」だ。カウンターには手作りパン10種類近く、約200個が次々と並ぶ。
地域にはスーパーやパン専門店がない。そうした環境で、自分たちの得意なことを生かし、地域にも喜んでもらえたらと2年前から始めた。収穫などで忙しい農繁期の秋を除いた季節営業の店だが、1個100円とお手頃で、ほっこり温かいお母さんの味が評判を呼んでいる。

素朴な味わいと一律100円が好評

松本市今井の「ワークショップカフェももっ茶」で開かれる「パンの日」は朝から忙しい。桜井智代さんは3人、倉橋茜さんは2人の子どもを送り出し、午前8時すぎには店へ。材料やこね機を持参し、4種類の生地をこねて発酵させ、次々と成型。家庭用オーブンの2段をフル稼働して焼き上げる。狭い厨房(ちゅうぼう)では、たくさんのパン生地を並べる場所を確保するのもやっと。パンが焼きあがってくる頃にはお昼。その後は訪れるお客さんの接客をしながらも、どんどんパンを焼く。
コーンやウインナー、メロンパンなどおなじみの菓子パンから、クルミパンやハイジパンといった食事パンも-。2人が作るパンは、ほんのり甘く素朴な味わいで、「手作りの味がうれしい」「近くで買えるのでありがたい。優しい味でおいしい」と好評だ。
「大きなこだわりはないけれど、安心安全なお母さんの手作りパン」(桜井さん)は、料理レシピサイト・クックパッドなどのレシピを参考に、スーパーで手に入る普通の材料で、ジャガイモや紫イモなどは自宅で生産したものを使い、一つ一つ丁寧に手作りしている。
市販のパンの値上がりが続く中、家計に優しく、子どもが好きなものを自由に選べる価格をと、パンは一律100円で販売。10個、15個とまとめて買う客も多い。材料費と店側に支払う光熱費を差し引くと、正直「全然もうけはない」が、2人は「とにかく楽しい。こういう楽しみがあるから、農繁期も頑張れる」と口をそろえる。

結婚期に今井へ力合わせ2年間

桜井さんは香川県出身、倉橋さんは三重県出身で、結婚して今井に移り住んだ。それぞれ、ナシ、リンゴを主に生産する果樹農家で、農業の担い手として働き、子育てに追われる。その傍ら、得意な菓子作りを生かし、4年ほど前から、今井地区福祉ひろばで月1回開催の「ひろば喫茶」でボランティアとして、ケーキなどを作り提供し始めた。
2017年春、「ももっ茶」がオープン。地域の人が集まり活動する拠点にしたいと考えていたオーナーから打診を受け、秋を除く月1回、パンを焼いて販売。徐々に知られるようになった。
今井に嫁いで来て初めて知り合い、夫同士が地元出身の同級生で、子ども2人が同じ学年だった縁もあり、交友を深めてきた2人。桜井さんはおおらかで大胆、倉橋さんはきっちりと繊細な性格と、補完し合う関係で、「お互いがいないとこんなことはできなかった」と振り返る。同居する義母が「パンの日」は夕食を作ってくれるなど、家族の理解や支えもあって2年間続けてこられた。
「パンの日」は今後も続けたいが、「ももっ茶」の今秋の閉店が決まっていて、秋以降の開催のめどは立っていない。自宅近くで直売所を年間3カ月ほど開いている倉橋さんは「将来的には自宅に工房を作ってパンやケーキ、手打ちそばなどを販売できたら」との夢も持っている。
次回の「パンの日」は4月12日、お昼ごろから午後5時まで開店予定。2人が作る菓子(100円~)もある。パン2個とコーヒーのセット500円は店内でも食べられる。ももっ茶 電話0263・75・8134
(佐竹伸子)

投稿者: mgpress