手作りの楽器でハーモニー 木祖「バンドーラ友の会」 中澤準一さん製作・指導

ドドソソララソファファミミレレド…。「きらきら星」のメロディーが素朴な弦の響きで聞こえてくる。演奏するのは木祖村で発足した「バンドーラ友の会」の会員たちだ。
「バンドーラ」はギターに似た楽器で弦は4本。ペンギンの形だったり、ハート形だったりするのは、会員の手作りだからこそ。デザインを自由に考え、木を削り、弦を張るまで5日間かけて仕上げた。
この楽器は元小学校教諭、中澤準一さん(68、上松町)のオリジナル。40年前から楽器作りと演奏の指導を続けている。木曽の木材を使い、根気よく製作し、完成後は仲間と演奏することで得られる感動は子どもも大人も同じ。
中澤さんの原点は「美しさに感動する心」。現在は宮大工として「龍神三体」の木彫にも取り組んでいる。

中澤準一さん 上松町・バンドーラ製作・演奏指導
作って音を出すすべてが感動

授業での活動が大人にも広がり

「バンドーラ友の会」は、木祖村観光協会が昨年初めて企画した滞在型の製作・演奏体験会の参加者でつくる。5日がかりで楽器を完成させた仲間たちが、「ここで終わりでなく練習して発表したい」と結成。木曽郡や名古屋市などの男女14人が参加している。
3月23日、木祖村薮原の村民センターに会員が集まり、練習があった。皆が集まって弾くのは3カ月ぶり3回目。弦を思うように押さえられない参加者に講師の中澤準一さんは「1日1回触るようにしていれば上達する。限りなく澄んだ響きを目指して頑張りましょう」と激励した。
「かえるの合唱」や「ちょうちょう」などを次々と練習。参加した村観光協会専務理事の圃中登志彦さん(58)は「演奏は奥が深く、仲間とも一生の友達になれそう」。孫が好きなアンパンマン形に作ったバンドーラを手に笑った。

中澤さんは信州大教育学部美術科や同科彫刻研究室で学び小学校教諭に。バンドーラを始めたのは2校目の島内小学校(松本市)だ。
「子どもたちがギター演奏をしたいと言いだしたけどギターを持ってる子がいなくて。だったら作ってみよう、と」。木造校舎が鉄骨に改築中で、旧校舎の壁や床などをはがして活用し第1号を製作。1年後の音楽会には40人が手作りバンドーラで音色を披露した。
その後は木曽郡内に赴任し生活科や図工の授業でバンドーラに取り組む。大切にしたのが、古里・木曽の木を使い、各自が好きなデザインで作るスタイルだ。「苦労して作った楽器だからいい音を出したいと工夫する。楽器の美しい形や美しい音色、友達と音が合ってくる喜び、すべてが感動体験なんです」
製作・演奏活動は6つの小学校で取り組んだほか大人にも広がり、上松町の女性でつくる「小森林(こもり)の会」は、70~90代が現在も毎月2回、中澤さんと共に演奏を楽しんでいる。

彫刻家の集大成龍神に取り組む

楽器作りの原点はバイオリンの名器ストラディヴァリウスとの出合い。26歳の時、バイオリンを学んでいた妹の影響で知り、その形に魅了された。
「作ってみよう」と思ったが作図法はなく、「作図法が分かれば、子どもたちでも作ることができる」と、バイオリンの古里・イタリアに何度も足を運び30年を費やして解明。子どもでも作りやすいバンドーラと並行してバイオリン作りにも取り組んだ。才能教育研究会の創設者、鈴木鎮一さんとも交流があった。
5校目の田立小学校(南木曽町)では1年生からバイオリンを作り始めて3年生で完成、4年生の時は東京のカザルスホールで演奏するまでになった。

現在、中澤さんは宮大工として寝覚の床(上松町)近くにある臨川寺の龍神三体を彫っている。中学時代、ケイソウ土に彫った龍の出来栄えを覚えていた友人から「寺のシンボルにしたい」と依頼され、彫刻家としての原点に取り組んでいる。
幼い頃、近所の神社で龍を眺めて感動して以来、龍が好きになり何度も彫ってきた。集大成とも言える今回は木曽ヒノキを使い、「龍を見た人が手を合わせたくなるような、祈る人に奇跡が起きるような龍にしたい」と彫りに力を込める。「バンドーラもバイオリンも龍も同じ。美しさに感動する心と、達成していく過程に夢中になる」と語る。
(井出順子)

投稿者: mgpress