「好きって何?」考え膨らむ 子どもが哲学する「ちびてつ」講座人気

「好きって何?」「自由ってどういうこと」「死について考える」…。
大人も考え込んでしまいそうなテーマを園児や児童が考える「ちびっこ哲学」、通称「ちびてつ」。信州大の学生有志が塩尻市市民交流センターえんぱーく(大門一番町)のサポートのもと、2013年から同所で開く人気の講座だ。
2018年度締めくくりの講座では、「哲学」してきた8つのテーマに沿った「お題」を書いた模造紙を床面に敷いた「すごろく」が登場。子どもたちはさいころの目に従って進み、止まったマスに書かれたお題について、友達や学生と話す。「考える」というよりは、座ったり寝転んだり、おしゃべりしながら考えを膨らませる。大人が考える難しい「哲学」のイメージが、大きく変わっていく。

話して考えて 正解ない楽しさ
ちびっこ哲学 信大生有志のワークショップ

柔軟な発想が学生にも刺激

「ちびっこ哲学」は信州大全学教育機構、有路憲一准教授(認知神経科学)の「考えるゼミ」のゼミ生有志が「子どもたちの考える力を引き出すワークショップ」として企画・運営。毎回一つのテーマについて「哲学する」。「哲学」といっても、哲学者の考えを「学習する」のではなく、「哲学する」は、主体的に考えたり、周りの人と話すことという。ちびてつでは、子どもたちがその日のテーマについて自由に話し、考えることを楽しんでいる。2018年度(昨年7月~今年3月、全9回)は年中児~小学5年生の16人が参加した。
3月に行った「すごろく」では、子どもたちは大学生や友達と話したり、考えたことを、模造紙に書き込んだり。「いい人になるには」のマスでは、「自分のこといい人だと思う?」の問いに「魚の頭としっぽ食べたからいい人」とイラスト付きで書いたり、「信号ムシしたよ」「えー。悪い!」と会話をそのまま書いたり。
「きらいなものを好きになるには」のマスでは「毎日特訓する」「好きな人が好きだったら好きになるかも」「お化けや幽霊も慣れればかわいい」「鬼だって友達が欲しくて泣いてる」など…。テストと違って、ここには「正解」はない。
この日は卒業式も行い、ミニチュアのすごろくと、活動の様子を記したDVDを贈呈。「このすごろくにスタートとゴールがないように、哲学にはゴールがない。考えるたびに答えが変わるかもしれない。これからも家族や友達と一緒に哲学してください」と金子さくら代表(当時教育学部2年)が呼びかけた。
ちびてつに3年連続参加する佐藤まゆりさん(8、塩尻市大門)は「答えが一つじゃないのが楽しい。本を読むときも『私だったらどうするかな』と考えるようになった」と笑顔。4年間携わった学生の風間萌樹さん(同4年)は「子どもは優しくしてあげる相手と思っていたが、ここでは分からないことを一緒に考える対等な存在で、教わることも多い。教育は一つじゃないと思うようになった」と学生にも刺激を与えている。
「小さい子は発想が柔軟で、けっこう濃厚なことを言う」と有路准教授。「哲学する」ことは、大人たちよりも、小さな子どもの方がむしろ得意なのかもと思わせる。

工夫凝らして人気の講座に

「ちびてつ」の発端は、ゼミ生の1人が見たドキュメンタリー映画「ちいさな哲学者たち」。フランスの幼稚園で3~5歳児が哲学する試みが描かれており、小さな哲学者が意見を交わす様子を見た学生が「こういうことが日本でもできれば」と声を上げたのが始まりだという。
初年度は3~9歳を対象に行い、以降小さい子どもを中心に、学生たちが対象年齢を毎年設定。「好きって何?」「友達って?」という身近な問いかけから始まり、子どもが考えたことがないような「豊かさって?」「正義って?」と考えを広げる。子どもの興味を引きつけ、考えを引き出していけるよう、導入や声かけなどを、学生たちが工夫を凝らして寄り添う。
「近年、小学校高学年や中学生を対象にした哲学はあちこちで行われているが、幼児を対象にした例は他に聞かない」と有路准教授。「ちびてつ」も当初は周りに驚かれたというが「小さい子でも工夫次第で『哲学する』ことができる」と、学生と一緒に工夫を模索しながら続けてきた。現在ではキャンセル待ちが出るほどの人気講座になっている。

(上條香代)

投稿者: mgpress