史上最年少で資格取得 電子ドラムの魅力18歳プロ講師始動

松本市中央3のコダマ楽器店内の防音設備が整った教室。スマートフォンからアンプを通じて大音量で流れる音楽は、1970年代に英国のハードロックバンド、ディープ・パープルが発表した「バーン」。激しく、疾走感のあるドラムのリズムが特徴の代表曲だ。
「これが気持ちいいんですよ」。巧みなスティックさばきで電子ドラムをたたき終えた18歳女子、爽やかな笑顔だ。
同市石芝の福島そらさんは、南安曇農業高2年時の一昨年、史上最年少で電子ドラムの講師資格を取得。今春、同校を卒業し、今月からプロ講師として社会人の第一歩を踏み出した。
既に6人が福島さんの教室で習うことが決まっており、「このドラムが大好きで続けてきた。楽しさを多くの人に伝えたい」と目を輝かせる。

教室の体験会笑顔で指導し

3月14日、福島そらさんの電子ドラム教室の5回目の体験会が開かれた。そこに訪れたのは松本市内の30代男性。新聞広告で体験会を知り、「弟がバンドをやっていて、自分も何か楽器を習いたかった」というのが理由だ。
福島さんはスティックの持ち方から教え始め、「今日は、ドラムの基本の8ビートをたたけるようになりましょう」と笑顔で提案。自分で見本を見せたり、左右の手や足の使い方を分解したりして指導した。
左右の手が一緒に動いてしまうなど、うまくたたけず、「ドラムって奥が深いですね」と、苦笑いする男性は、福島さんの年齢を知ると、「それはすごい」と驚いた表情を見せ、「入会を考えたい」と好意的に話した。

厳しい「師匠」練習を重ねて

福島さんがドラムを始めたのは5歳のころ。両親が音楽好きで、ドラムをたたいていた父から勧められたのがきっかけだ。最初は「関心がなかった」が、試しに行った教室で電子ドラムを見て「格好いい」と思い、そこから魅力に引き込まれた。
小学4年の時、それまで通っていた教室が開催する曜日の都合で通えなくなり、コダマ音楽教室に入会。そこで出会ったのが、「師匠」と仰ぐ東京を拠点に活動するトップドラマー、MASAKing(本名=鈴木正樹)さん(39)だ。
それまで、「とにかく楽しんでたたいて」と指導されていた福島さんにとって、楽譜通りにたたくことや、譜面を読めるようになることを求めるMASAKingさんは「私の甘さを指摘してくれ、厳しいと思ったが、とても刺激になった」存在。
以後、MASAKingさんの指導に従って練習を積み、徐々に実力を付けると、中学2年時に「将来は電子ドラムの講師になりたい」という思いが芽生えた。それを聞いた師匠は、とても喜んだという。
高校1年で、電子ドラムの全国コンテストの中高校生の部で準グランプリを獲得。それからは、電子ドラムの製造メーカーが認定する講師資格を取得するため、聞いたドラムの音を楽譜にしたり、譜面を見てすぐに演奏したりするなどの課題を猛勉強。翌年、「まさか受かるとは思わなかった」という試験に、史上最年少で一発合格した。
MASAKingさんから、福島さん指導の教室開催を打診されたコダマ楽器の児玉勇社長(75)は「教えてもらう立場から、教える立場になった。ドラムの技術も大切だが、人としてきちんとしていなければならない」と、社会人としての心得をアドバイス。「ここがスタートライン。『福島さんと出会って夢や希望がかなった』といわれるような講師になってほしい」とエールを送る。
教室では初心者や子どもを教える予定で、体験会を通じて6人が入会。現在の教室の収入だけでは自立できないので、別にアルバイトもしている。
福島さんは「趣味が仕事になり、不安もあるが、いつかは講師の仕事だけでやっていけるようになりたい」と先を見据え、「ドラムは、自己表現できる唯一の道具。ドラムが楽しいってことをまず教えたい」と笑顔を見せる。

【メモ】
【電子ドラム】電子的な処理で音を増幅させ、演奏する仕組みのドラムセット。たたく部分の振動をセンサーで受け、その電気信号で音源を鳴らし、アンプやスピーカー、ヘッドホンで音を聞く。畳1畳ほどのスペースでセットできるコンパクトさと、ヘッドホンを接続すれば消音できるのも特徴。音などを気にせず自宅で気軽に演奏できることから、人気が高まっている。

(浜秋彦)

投稿者: mgpress