生坂こなもん工房伝統の食文化PRに奮闘

人気集める大きなおやき

直径8センチ余り、重さは220~230グラム。ずしりと重く、一回り小さなソフトボールといったところか。生坂村の郷土食「灰焼きおやき」は、一般的なおやきより堂々としたたたずまい。月2回の販売日には、すぐに売り切れる人気商品だ。
厚めの皮の表面はぱりっと香ばしく、中はもっちり。具材の野菜は生のまま包み、しゃきしゃきした食感を残しつつ、本来の甘みとうま味が楽しめる。
「味も見た目のインパクトも、一度食べたら忘れられないでしょう」と笑うのは、伝統的な灰焼きおやきの生産・販売に取り組む住民有志グループ「生坂こなもん工房」の降旗政弘会長(71)。今年で5年の節目を迎える。メンバーの平均年齢は70歳前後。生坂の食文化を守ろうと、新たな可能性も模索している。

伝統の粉食観光業と連携も

昔ながらの灰焼き製法

「生坂こなもん工房」のメンバーは、資金面で協力する賛助会員も含めて38人。おやきは月2回、空き家を改修した村内の生産施設で作っている。
全て手作りで、昔のままの製法にこだわる。「おやきは日常食として、かつてはどの家にもあったいろりで焼いていた。その在り方を、できるだけそのまま伝えたい」と、降旗政弘会長は話す。
野菜やおからなどの材料は可能な限り村内産を使う。5種類の野菜が入った「ミックス」の野沢菜漬けも、メンバーの自家製だ。1回で作れるのは160個ほど。手ごねの生地で具材を包んだら、鉄板で焼いて表面を乾かし、中身が分かるように焼き印を入れる。灰の中に入れて30~45分程度、じっくりと蒸し焼きする。
灰焼きの工程を受け持つ降旗会長は、「今の時季はまだいいけれど、夏場は1日で5キロ近く体重が落ちることもある。こう見えても重労働なんです」とおどけてみせた。

1年かけて生産軌道に

同工房は、マツタケ山の管理・整備を行っていた「夢の里山の会」が前身となり、2014年9月に結成。県の地域発元気づくり支援金なども活用し、空き家を買い取って焼き窯を備えた生産施設に改修した。同年12月、本格的に活動を始めた。
里山の会は、村祭りなどのイベントでマツタケを使ったおやきを実演販売した経験がある。おやき作りもスムーズにいくかと思われたが、「品質の安定には苦労した」と降旗さん。
灰の中でパンクして皮が破れたり、火が通り過ぎて硬くなったり。逆に具材が生だったりしたことも。収支や生産効率なども考えなければならず、試行錯誤が続いた。ミーティングで厳しい意見が飛び交うこともあったが、分担制にしてそれぞれが責任を持って担当工程の技術向上に努めることで徐々に改善していった。それでも生産が軌道に乗るまで、1年ほどかかったという。
降旗さんらによると、同村は明治期ごろまで米作りより小麦の生産が盛んだった。「この地ならではの粉食・小麦食文化を伝えていきたい」。そんな思いが、活動の根底にある。

新たな商品や体験ツアーも

現在はおやきの他に月1回ピザも焼いており、さらに幅広い層にアピールできるようスイーツ系のおやきなども探りたいという。
手作りのため、生産が追いつかないのが悩み。ただ、「みんなだいぶくたびれてきたけれど、喜んでくれるお客さんがいる以上、頑張らなきゃね」。
今後取り組みたいと考える方策の一つが、観光業とタイアップした灰焼きおやき作りの体験ツアーだ。「この地を訪ね、丸ごと知ってもらうことで、灰焼きおやきファンだけでなく、生坂ファンを増やせれば」。降旗会長は、顔についた灰を拭いながら朗らかに笑った。
おやきは時季によって異なるが、ミックス、なす、おからなどの種類がある。1個280円。毎月第2・第4土曜日、ファーマーズガーデンあかしなで販売。ピザ(1枚1100円)は第3土曜日、道の駅いくさかの郷で販売。村振興課(電話69・3112)で予約も受け付ける。

(長岩将弘)

投稿者: mgpress