松本出身の山田さん 翻訳部門で本屋大賞

松本市出身の翻訳家・山田蘭さん(54)が訳した英国の推理小説『カササギ殺人事件』(アンソニー・ホロヴィッツ著、創元推理文庫)が、全国の書店員がお薦めを選ぶ本年度の「本屋大賞」翻訳小説部門で大賞を受賞した。昨秋刊行され、出版社や雑誌のミステリーランキングを総なめにするなど話題に。山田さんに作品の魅力や、翻訳の苦労などを聞いた。
-本屋大賞を受けた感想は。
ミステリーに限らずあらゆるジャンルの中から選ばれる賞で、うれしさもひとしお。語り手が編集者で、書店に本が並ぶ喜びや、そこに至る大変さなども語っており、書店員に親しみを持ってもらえたのかもしれません。
-作品の魅力は。
ミステリー初心者から読み慣れた古強者(ふるつわもの)まで、どんな人でも楽しめる。作中作として登場する、アガサ・クリスティ作品のような古き良きミステリーと、出版業界の世知辛さなども含めた現代風の話の二つが、まるで読者を振り回すように展開し、全ての真実が明らかになる瞬間を強烈に演出。ミステリーを読む快楽を改めて感じさせてくれます。
-翻訳で苦労した点は。
下巻に登場する純文学風の作中作は、意図的に難解な単語を使い、言い回しも「うざい」感じ。そういったニュアンスも含めて訳さねばならず、あえて読みづらい文章を書く難しさを痛感しました。
ただ、作中作や手紙など、語り手以外のさまざまな文体が出てくる点は、楽しくもありました。訳を意識せず、著者の言葉そのままであるかのように読んでもらえるのがよい翻訳だと思うし、目指すところでもあります。
-今後の仕事は。
今、ホロヴィッツ自身がワトスン役として登場する「現代版シャーロック・ホームズもの」のようなシリーズに取り組んでいます。本書の作中作「アティカス・ピュントシリーズ」を書く考えもあるようで、楽しみです。
これまではすでに亡くなった人の作品を手掛けることが多く、やりがいはあったのですが、新作が出るわくわく感がなかった。今はそれを感じながら仕事ができています。
面白い国産ミステリーもたくさんありますが、異なる国や時代、文化に浸れる翻訳ものを読まないのはもったいない。本書が、翻訳ミステリーの魅力に触れる一歩目になればうれしいです。
(長岩将弘)

【やまだ・らん】東京で生まれ、2歳の時に松本市へ。松本深志高校から早稲田大に進み、1997年に共訳で、98年に単独で訳書を出版し翻訳家デビュー。福岡市在住。

【カササギ殺人事件】出版社で文芸部門の責任者を務める語り手スーザンは、担当する推理作家アランの新作「カササギ殺人事件」の原稿を受け取る。名探偵アティカス・ピュントが活躍する世界的人気シリーズだが、一読したスーザンは思いがけない幕切れに激怒。原因を突き止めようと行動する彼女を、さらに予想外の事態が待ち受ける。国内では昨年9月の刊行以降、本屋大賞を含めこれまで合計7つのランキングや文学賞で1位を獲得。

投稿者: mgpress