25日「新宿タイガー」記録映画上映 「虎になる」直感 共感呼ぶ生き方

虎のお面をかぶったど派手な格好で47年間、東京・新宿で新聞配達をする「新宿タイガー」を追った記録映画が25日、松本市深志3のまつもと市民芸術館小ホールで上映される。
タイガーさんは新宿、特に配達・集金を担当する新宿3丁目界隈(かいわい)では知らぬ者のないほどの存在。その正体は、松本市波田出身の原田吉郎さん(71)だ。
24歳の時、祭りの縁日で虎のお面を目にしたその刹那、「虎になる」と決意。以降、罵声を浴びようが暴力をふるわれようが屈することなく“虎”として生き、そして、街に受け入れられた。
直感に従い、自分の生き方を貫く原田さんは、多くの共感を呼び、メディアに引っ張りだこ。映画PRのために帰省した原田さん、もとい、タイガーさんを取材した。

新宿タイガー 松本市波田出身・原田吉郎さん
「ラブ&ピース」貫いて生きる

生涯虎を決意苦難の日々も

新宿タイガーこと原田吉郎さん(以下タイガーさん)は、3月の映画公開に先立ち、松本へやってきた。波田の実家に映画のチラシを届けた後、まつもと市民芸術館で地元メディア5社の取材を受けた。「すでに東京で25社の取材を受けました。あり得ない、あり得ない」とうれしそうに笑う。
タイガーさんは虎の格好で特急あずさに乗り、アルピコ交通上高地線に乗って実家へ行き、駅前大通りを歩いて芸術館まで来たという。
「あり得ない、あり得ない」という記者の心の内のツッコミを見透かしたように、「驚くことじゃないですよ。だってウチは虎なんだから」。

タイガーさんは週6日、新宿で朝刊と夕刊を配り、集金する。朝配るのは全国紙やスポーツ紙など合わせて約250部。起床は午前3時半。仕事終了は午後6時すぎだ。
梓川高校を卒業し、大東文化大へ入学。この時、新聞奨学生(新聞社の奨学金制度)になり、今に至るまで新聞配達を続けている。「この仕事が好き。理屈じゃないんです」
大学を2年で中退し、歌舞伎町にある新聞販売店に入社。そして24歳のある日、稲荷鬼王神社の祭りで虎のお面を目にしたとき、生涯「虎」として生きることを決意。お面を30枚まとめ買いした。「直感です。理屈じゃない」
そこからは苦難の日々。「新宿の良いところも悪いところもすべてかみしめています」という言葉が重く響く。常に「虎」のお面をかぶり、ど派手な服を貫いた。仕事でも、プライベートでも。それは「ラブ&ピース」という信念を貫いて生きる、ということだった。
学生紛争真っただ中の学生時代、タイガーさんは高倉健さん主演の「昭和残※(ざんきょう)伝唐獅子牡丹」に夢中になった。暴力的になっていく仲間たちを傍目(はため)に、怒りを内に秘める健さんの姿に酔いしれた。
「虎」になったことで、タイガーさんは自分なりの「ラブ&ピース」な生き方をしていく。声高に何かを主張することなく、ただひたすらに新聞を配り、大好きな映画に心ときめかせ、飲食店がひしめく新宿ゴールデン街で見知らぬ人たちとの会話を楽しむ。
心無い言動を受けても決して反抗しない。お金に興味を示さず、出演料や取材謝礼は受け取らない。「虎に野望、欲望は一切ない。あるのはシネマと美女と夢とロマン」と豪快に笑う。
特に「シネマと美女」は心の支え。取材中も話題はすぐに映画へ移り、大好きな作品、役者、監督について実に楽しそうに語る。「映画は女優を中心に見る」と、オードリー・ヘプバーンさんら往年の名女優から沢尻エリカさんまで魅力を語り尽くす。
身に着ける縫いぐるみは“ファミリー”。女性たちからプレゼントされてどんどん増えていく。総重量は10キロを超えるが「重くなんかないですよ。大切な家族ですから」とうれしそう。
「虎への反応は百人百様。でも、それが一番いいんです」とタイガーさん。「それぞれの感性で虎を見る。その中で『本物の虎がいた』と思ってもらえたら、それでいい」
見た映画や自分と縁のあった人たちを褒めちぎり、風のように去って行ったタイガーさん。「いろんな生き方がある。それを貫き、本物になればいい」。そんなメッセージを受け取った。

【映画「新宿タイガー」】
俳優の八嶋智人さんら親交のある人たちの証言やタイガーさんの日常を記録。佐藤慶紀監督、ナレーションは寺島しのぶさん。午後1時半と7時半に芸術館小ホールで上映。前売りと高校・大学生1400円、当日1800円。問い合わせは主催のシネマセレクト℡0263・98・4928

(松尾尚久)

※人ベンに峡の旧字体のツ

 

投稿者: mgpress