色苗絵の具に田んぼアート 地元若手農家グループなどボランティア500人以上が協力

黄色、薄赤、深緑…。絵の具の話のようだがそうではない。安曇野市豊科の安曇野スイス村前に出現した「信州安曇野田んぼアート」(実行委員会主催)の稲の葉の色だ。古代米を基にした稲は、苗の時点から普通の稲と色が違う。色苗をまさに絵の具のように植え分けて、NHK大河ドラマ「いだてん」で歌舞伎俳優の中村勘九郎さんが演じるマラソン選手、金栗四三(しそう)の姿を描く田んぼアート。15日、展望台から一望できるようになる。
育苗を担ったのは、安曇野の若手農家グループ「安曇野.come(どっとこめ)」のうち5人。制作では、遠近法を考慮した図面に基づいて測量をした後、色苗を植える作業などにボランティア延べ500人以上が関わった。完成までの苦労話を関係者に聞いた。

「いだてん」で観光の資源に

安曇野市の「田んぼアート」は、5回目となる信州安曇野ハーフマラソンの特別企画。新たな観光資源開発などの狙いで企画し、市や市観光協会、JAあづみなどで実行委員会(委員長=丸山庄一・市観光協会長)を組織。NHK大河ドラマ「いだてん」がテーマとあり、主演の中村勘九郎さんの所属事務所、まつもと大歌舞伎実行委員会、俳優で農業コンサルタントの永島敏行さんがアドバイザーとして名を連ねる。
実行委の中で主に現場に携わるのは「田んぼアート制作部会」のメンバー8団体と個人参加の合わせて15人ほど。部会長の丸山秀子さん(70、穂高)は「大勢の協力があり、ここまでこぎ着けた。正直、苦労もあった。これからも雑草取りから稲の管理、最後の稲刈りまで手は抜けないが、やりがいはある」と笑顔を見せる。

食用との混雑気を使い育苗

田んぼアートの要となる、色苗を育てた「安曇野.come」は若手農業後継者のグループ。農薬と化学肥料を減らした米作りなどに取り組む。メンバーの1人、細田直稔さん(38、三郷)は「色苗を育てる時期が、通常の稲の育苗時と重なるため、人手やハウス内の面積、他の苗と混雑しないかなど、種まきの時から気を使った」と言う。田んぼアート先進地から取り寄せた種6種類を、メンバーで分けて取り掛かることにした。
不安もあった。事前に県松本農業改良普及センターに種を調べてもらったところ、黒に近い紫色になる「紫大黒」の発芽率が悪いことが分かったからだ。細田さんが担当したのは3種類。紫大黒は苗箱1つ当たりにまく量を他の2種類の倍にした。「それでも、苗の間に隙間ができるほど発芽率が悪かった」と振り返る。
この色は、絵の輪郭など重要な部分に使うため、足りなくなると困るのは必定。制作部会は急きょ、似た色の「濃紫」の種を取り寄せ、宮澤和芳さん(34、三郷)に追加の育苗を頼んだ。
宮澤さんは「田植えまでに、他の色苗に近い大きさに育ち安心した。機械まきをしたため、食用の種と交ざらないよう、いつも以上に丁寧に機械を掃除した」と苦笑する。

南安農高生も測量など手伝い

測量は松本市島内の総合建設コンサルタント会社「アンドー」が担当し、南安曇農業高校(豊科)環境クリエイト科の2年生が手伝った。図案に基づいて測量しながら、6700平方メートルの水田に3300本ものヨシの棒を挿し込み、ピンクのテープで絵の輪郭を作った。苗の色を指示する小さな旗も添え、「徐々に作品が出来上がっていくようで、興味深かった」という。
高校生は田植えの初日にもボランティアと共に参加。丸山部会長は「色苗は普通の苗より弱いので、風が強いと上手に植えられない。好天で助かった」と喜ぶ。その後、絵の周辺に県のオリジナル米「風さやか」を植え、勘九郎さんらが参加した仕上げの田植えイベント(6月2日)で完成した。
実行委は「稲が育ち、隙間が少なくなる7月中旬~8月中旬が見ごろ。その後は色の変化が楽しめる。何度も足を運んでほしい」と呼び掛ける。

高さ6・6メートルの展望台(安曇野スイス村駐車場内)からの鑑賞は15日~9月28日。中学生以上300円、小学生100円。市観光交流促進課 電話 71・2000

(長田久美子)


投稿者: mgpress