小谷樹液プロジェクト 7割が広葉樹林宝の山から特産

小谷村中谷地区で、イタヤカエデを活用し、特産品を作ろうという「小谷樹液プロジェクト」の活動が本格化している。今年3月に樹液採取体験などの「おたりの森のスイートフェスタ」を初開催したのに続き、樹液を使ってパンを作るグループ「otari sap bakery club(オタリ・サップ・ベーカリー・クラブ)」も発足。販路拡大に一役買っている。
村の面積の7割を占める広葉樹林の活用として、中谷開発委員会が進める同プロジェクト。中心になり、支援しているのは森林(もり)づくりコーディネーターの山口真保呂さん(53、大町市大町)。森林は宝の山といわれるが、生かさなければ持ち腐れだ。樹液を使ったパンや料理など、多様な活用法を考えている。

片道徒歩40分雪深い冬山へ

「小谷樹液プロジェクト」のけん引役、山口真保呂さんを取材に訪ねると、樹液を沸騰させて入れた紅茶と、シロップをかけたアイスクリームを出してくれた。紅茶はほんのりと優しい甘さでとても飲みやすい。風味がよく、アイスクリームもおいしさが際立つ。山口さんは「まず、イタヤカエデの樹液がどんなものか知ってもらおうと思って」と話す。
樹液は、ほぼ透明でさらさらしている。とろとろしたシロップ状のものが出てくるのかと思っていた、自身の無知が恥ずかしい。いわゆるメープルシロップは、樹液を煮詰めて煮詰めて作るという。もともと、樹液の糖度は2~3%で、シロップは66%。60分の1~100分の1にするというから、その作業にかかる時間と労力は想像に難くない。
採取時期は1~3月と、寒く雪の多い時期だ。多い時には一晩で20リットルも出ることがあるといい、今年は昨年より100リットル多い600リットルを採取した。「採取する森まで片道40分歩くこともあり、1日3回が限度」と山口さん。

パンの素材や飲み物などに

山口さんらが広葉樹林の活用法を考える中で、イタヤカエデに注目したのは2014年10月に開いた「小谷村の森林などの活用プランを検討する会議」。全国の活用事例を聞いたことがきっかけだ。翌年には村で森林フォーラムを開き、広葉樹の活用についてワークショップを開いた。
16年には樹液活用で先進的な取り組みをする埼玉県秩父市を視察。樹液採取は「面白そう。自分たちもできそう」と始めた。3シーズン目の18年には小谷で採れた樹液の安全性の確認や、成分分析に取り組んだ。子どもの頃から森林に興味を持ち、その恵みに気づいてと、小谷小学校の総合的な学習の時間を使い、イタヤカエデについて指導も始めた。
課題は販路だ。担い手の多くは70~80歳と高齢で、採取量は増えても販路がなくては活動も盛り上がらない。3月に開いた「おたりの森のスイートフェスタ」では、イタヤカエデの森や樹液を採る現場を見学、メープル紅茶、メープルサイダーを味わってもらった。活動支援募金をした人には小谷産のメープルシロップ「おたりの森のスイートメモリー」などをプレゼントした。
同月の「otari sap bakery club」の発足も大きな弾みになった。Sap(樹液)を使ったパン作りに取り組む。現在は「のきさきカフェ」(明科)など、安曇野市内の4店舗がメンバーだ。「天然酵母のパン工房Kuuhくぅ」(穂高)を開く坂本久美子さん(44)は現在、天然酵母に樹液を入れて活用。今後は食パンなどに使う予定で、「水分の代わりに樹液を使って練ると、砂糖を使わなくても甘みが出る」とする。

カエデの森へ山の更新目標

もう一つの目標は、イタヤカエデの森を増やすことだ。あまり利用価値のない杉を伐採したり、巨木になったナラも枯れる前に切って製材したりすることで山を更新し、カエデの植栽を広げたい、という。山口さんは「他の地域でも樹液を使いたいと声を上げてもらえればうれしい。森について知ってもらうなど、共同で活動できたらいい」と話している。
(八代けい子)


投稿者: mgpress