木の枝アートに 貝山さんの挑戦  16日まで穂高で展覧会

里山や森にある木の枝。個人の庭や学校、保育園などに植えられた思い入れのある木。そういった身近な木の枝の活用に、安曇野市穂高のデザイナーで造形作家の貝山伊文紀(いぶき)さん(39)が取り組んでいる。伐採した後、アートとしてよみがえらせる方法や展示・販売も含めた活用法などを、林業に携わる人や庭師、木工作家、ギャラリー、ショップなど広いジャンルの人たちと共に考えていきたいと思っている。
貝山さんの考えと生み出す作品に共感した、同市穂高有明のギャラリー「JIPPOU(十方)」経営者、平塚隆司さん(38)と沙文佳(さやか)さん(33)夫妻が16日まで、展覧会「枝のキオク」を開き、その考えを伝えている。

枝の形生かし

展覧会「枝のキオク」会場には、持ち手の部分が細いもので直径3ミリ、太いものでは2センチ以上など、さまざまな形や大きさのスプーンが並ぶ。他に、ドウダンツツジの枝を生かしたモビール、シラカシやイチイの枝を使ったランプシェードなどを展示。いずれも貝山伊文紀さんが枝の姿や形を生かし、皮を剥ぎ、磨き上げて作ったものだ。
会期中は2回のワークショップも企画。貝山さんが作ったスプーンを、香りの良いクロモジ入りのオイルを使いながら磨いた。9人が参加した8日の初回は好評で、15日開催の2回目に再度申し込んだ人もいる。その場で、参加者がイベントのアイデアを出したりもした。平塚さん夫妻も「開いてよかった」と、喜ぶ。
貝山さんは千葉県柏市生まれ。東京芸大と同大学院でグラフィックデザインや、製品・商品の開発から販売方法などの方向性を企画開発する「プロダクトデザイン」を学んだ。「物を作るだけでなく、『事』を生み出す、その過程のストーリーが大事」と言う。

物語性が大事

2006年、木の節(ふし)を生かした家具シリーズ「森のことば」を生んだメーカー「飛騨産業」(岐阜県高山市)のデザイン室に就職。「それまで無駄なものとして扱われていた『節』に美を見いだしたことに共鳴した」と言い、「従来、1本の丸太から家具として使用されるのは10~25%だが、残りの部分に美しい節があったりする」と言葉をつなぐ。林業の世界では本来使わない端材に、息を吹き込む仕事だった。
その後フリーになり、16年には同社で枝を生かした家具「kinoe」シリーズを発表。「飛騨産業は、曲木や圧縮技術を培ってきているので、不均一な木の枝も家具に使うことができる」
安曇野に移ったのは17年。デザインの仕事の他に、地元の庭師に伐採技術を学ぶ時間もとっている。気に入った枝をスプーンやマグネットなど、さまざまな物に変える造形作家でもある。

身近な素材で

貝山さんは林業従事者から「切った木が、まきやチップなどにしかならず悲しい。生きてきた木の歴史を生かせる使い方があれば」という声を聞く。木工作家も製材済みの板材を購入することが大半だ。「目の前にある身近な木にも目を向けてほしい」と思う。そのためには、数多く出る枝から使える部分を見極める技も必要と感じる。
最近、そんな考えに同調するクラフト作家らが、少しずつだが出始めた。「30~40代くらいが多い」という。貝山さんは、賛同者と組んでさまざまなことをしていきたいと考えている。保育園の庭に植えてあるなじみの木の枝を剪定(せんてい)し、給食時に使う調理器具にするアイデアも実現しつつある。
「作品を置いてくれるギャラリーやショップを探すことも必要。今回の展覧会はありがいこと」と言う。
15日のワークショップは午前10時~午後3時の間に行う。所要時間1~2時間。予約優先だが、現地申し込みも可。2000~7000円(扱うスプーンによる)。展示は16日まで午前10時~午後5時。ギャラリーJIPPOU、電話88・2086

(長田久美子)


投稿者: mgpress