夏山の登山 気を付けて

県山岳総合センター 杉田所長
松本協立病院 市川医師に聞く

本格的な夏山の登山シーズンを迎える。「仲間に誘われて」「時間にゆとりができた今、もう一度」と登るシニアも多いが、遭難者の半数をこの年代が占めるだけに安全には十分気を付けたい。県山岳総合センター(大町市)の杉田浩康所長(65)に高齢者登山の注意点を、国際山岳医で松本協立病院(松本市)循環器内科の市川智英医師(38)に同院が5月から始めた登山者検診について聞いた。

力量に応じた山選びを

県警によると県内の2018年の山岳遭難者数は330人。そのうち60歳以上は143人で43.3%と半分近くを占める。
杉田所長は遭難の原因を「過信によるものと、体力や経験の無さによるもの」と見る。「若いころ登山の経験があっても、今は体力は落ち、経験も古くなっている。昔と同じ日程を組んで疲れて動けなくなったり、事故を起こしたりする人が遭難した人の中に多い」
また、「登った人から『良かった』という話を聞き、体力も経験もないのに『行ってみようか』と準備もなしに向かう無謀な人もいる。観光地に行くのと同じ感覚では駄目」と警鐘を鳴らす。
登山をするうえで最も大切なのは「力量にあった山に行くこと」。さらに単独行は避け、一緒に行く仲間の力量と難易度が合う山を選ぶ。遭難時に役立つ場合もある衛星利用測位システム(GPS)機能付きのスマホや時計などの利用も勧める。
計画時にはメンバーの役割を決め、リスクを拾いだして一つずつ回避する。天候不良や体調不良などで予定通りにいかない場合に、どの登山道から下山するかといった「エスケープルート」も考えた日程表、非常時の連絡方法などを盛り込んだ計画書も作っておくことが大事という。
県山岳総合センターは、体力や能力、技術に応じた山選びの目安にと「信州山のグレーディング(無雪期・天候良好時の登山ルート別難易度評価)」を2014年に作成した。県内の一般的な登山ルート(123ルート)を、体力度(10段階)と技術的難易度(5段階)でランク付けしたもので、同センターのサイトなどに掲載している。

事故を予防登山者検診

「山岳遭難死の20%は突然死が原因。心臓病の既往歴のない『隠れ心臓病』がほとんどです」と市川医師。登山者検診は60歳以上の人、久しぶりの登山またはこれから登山を始める人などに勧める。
検診は血液や尿、心電図などの各検査、胸部レントゲンなどの他、心肺運動負荷試験(CPX)も行う。CPXは血圧、心電図、酸素飽和度を計測しながら安全な状況で自転車(エルゴメーター)をこぎ、酸素摂取量や二酸化炭素排出量などを測定。これにより肺・心機能、末梢・肺循環、骨格筋機能を含んだ全身の運動耐容能が評価できるという。最後に専門医の診察、結果説明があり所要時間は3時間ほど。
登山者検診の必要性について市川医師は「自分が心臓病だと自覚がないまま山に登り、亡くなる人もいる。山で倒れてもすぐに助けることはできない。事前に心疾患を見つけられれば、不幸な事故を少しでも防げるのではないか」。登山好きが高じて松本市に移住し、休日は山に登る専門医だからこその発想が採用された。
基本コースは2万6400円。心肺運動負荷試験フォロー(1年以内)が付くと2万9800円。栄養相談(3000円)などのオプションも用意している。予約は同病院健診課 電話0263・35・0479
(八代けい子)


投稿者: mgpress