行政書士大沢利充さんに聞く 相続法どこが変わった?(上)

相続に関する法律が約40年ぶりに大きく改正され、ことし1月から来年にかけて段階的に施行されている。「遺留分制度の見直し」など7月からスタートした相続法を中心に、全国相続協会相続支援センター(松本市北深志)代表世話人で行政書士の大沢利充さん(69)に改正点などを聞いた。2回に分けて紹介する。◎は大沢さんのコメント。

不動産のもめ事など回避

【遺留分制度の見直し】(7月1日施行)遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人のために、法律で保障されている一定割合の相続分のこと。遺留分があれば、仮に遺言書に「全財産をAに相続させる」と書いてあっても、相続人は法律で決められた遺留分相当額までAに権利を行使できる。
従来の相続法では、遺留分が不動産の場合は権利者で共有することが優先され、さまざまな問題が生じていた。改正後は遺贈や贈与を受けた人(受贈者)に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できるようになり、不動産の共有を巡るもめ事や事業継承の支障を防げるようになった。
遺留分の割合は、2分の1(直系尊属=父母、祖父母のみ=が相続人の場合は3分の1)と決められている。受贈者が金銭を直ちに準備できない場合は、裁判所に支払期限の猶予を求めることができる。

★事例1 相続人…妻、子2人 相続財産…土地(1000万円)
夫の遺言書に「全ての財産を内縁の妻に遺贈する」と書いてあった
妻の遺留分…1000万円×2分の1(遺留分の割合)×2分の1(法定相続分)=250万円
子の遺留分…1000万円×2分の1(遺留分の割合)×4分の1(法定相続分)=125万円
妻は250万円、子はそれぞれ125万円を内縁の妻に請求できる。
★事例2 相続人…長女、長男 相続財産…会社の土地建物(1億円)と貯金(1200万円)
経営者だった被相続人が、長男に会社の土地建物を、長女に貯金を相続させる旨の遺言書を残して死亡(配偶者は既に死亡)。遺言の内容に不満な長女が長男に対し、遺留分侵害額の請求をした。
長女の遺留分=(1億円+1200万円)×2分の1(遺留分の割合)×2分の1(長女の法定相続分)=2800万円
長女の遺留分侵害額=2800万円―1200万円(相続した貯金)=1600万円
長女は長男に対し1600万円を金銭で請求できる。

◎遺留分に悩む人は多いが、与えられた権利を行使するかしないかは自由。不動産を売るか共有にするか、遺留分侵害額を話し合いで決めてもいい。

一定額引き出し単独でも可能に

【預貯金の払い戻し制度の創設】(7月1日施行)従来の相続法では、預貯金口座は名義人が亡くなると凍結され、相続人全員が共同で出金の手続きを行うか、遺産分割協議が成立しないと払い戻しができず、葬儀費用や病院の支払いなどに困るケースがあった。
改正後は、家庭裁判所の関与なく、相続人単独で一定額の預貯金を引き出せるようになった。各相続人が引き出せる一定額は、「相続開始時の被相続人の口座残高×3分の1×法定相続分」で計算する。

★事例 相続人…長男、次男 被相続人の貯金(600万円)
600万円×3分の1×2分の1(払い戻しをする共同相続人の法定相続分)=長男または次男は単独で100万円の払い戻しが可能
1つの金融機関から払い戻しが受けられるのは150万円まで。

◎払い戻しの請求には戸籍謄本などの準備が必要になる。
(宮沢厚子)
(出典:法務省ホームページ掲載のパンフレット「相続に関するルールが大きく変わります」)


投稿者: mgpress