行政書士大沢利充さんに聞く 相続法どこが変わった?(下)

前回(23日)に続き、約40年ぶりに改正された相続に関する法律のポイントを全国相続協会相続支援センター(松本市北深志)代表世話人で行政書士の大沢利充さん(69)に聞いた。◎は大沢さんのコメント。

介護していた人にも権利
特別の寄与の制度の創設

【特別の寄与の制度の創設】(7月1日施行)相続人以外の親族が、無償で被相続人の療養看護などを行った場合、相続人に対して金銭の請求ができる制度。
従来の相続法では、相続人が被相続人の療養看護などを行った場合、寄与分制度により遺産の配分が認められたが、相続人以外の親族にはこのような制度がなく、遺産の配分が認められていなかった。
◎寄与分とは、被相続人の療養看護などの貢献による相続分。これまでは配偶者の親の療養介護をしてもその貢献が認められず、不公平感があったが、今回の改正で苦労が報われる。人間関係を考慮した新しい制度だ。

住む場所も生活費も安心
配偶者居住権の新設

【配偶者居住権の新設】(来年4月1日施行)配偶者居住権とは、相続開始時に被相続人の配偶者が、被相続人の所有する建物に住んでいた場合、その建物に無償で居住できる権利。
現行法では、相続財産で居住用建物の占める割合が大きい場合、配偶者は現預金など他の財産が取得できず、生活に困ることがある。
改正により、居住用建物の所有権は「配偶者居住権」(配偶者の使用部分)と「負担付き所有権」(残余部分)とに分けられた。
配偶者が「配偶者居住権」を取得すれば、終身または一定期間、無償で自宅での生活が継続できる。しかも、現預金などの他の財産が取得しやすくなり生活の安定につながる。
◎父親が再婚後に亡くなった場合、先妻の子どもが後妻を追い出すケースが多発しているが、この改正で勝手に追い出せなくなる。
配偶者居住権のほか配偶者短期居住権(来年4月1日施行)も新設された。配偶者が相続開始時に、被相続人の持ち家に無償で住んでいた場合に、一定の期間(例えばその家が遺産分割の対象となる場合に、遺産分割が終了するまで)は従来通り無償で住み続けることができる。配偶者が安心して居住できる制度の新設だ。

自筆証書遺言の方式緩和
保管制度の創設

【自筆証書遺言の方式緩和(今年1月施行)・法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設(来年7月10日施行)】
自筆の遺言書は全文手書きで作成する必要があったが、改正後はその一部、財産目録(遺産の明細)についてのみ、パソコンでの作成や、不動産の登記事項証明書の添付、預貯金の通帳口座のコピーを添付するなどの方法が認められるようになった。ただし、財産目録にはそれぞれ署名捺印が必要。
保管制度は、自筆証書遺言を法務局で保管するというもの。自ら保管するときに心配される紛失や忘失、盗難、改ざんなどが解消される。
保管申請は、遺言者自身が遺言書保管所(指定の法務局)に自筆証書遺言書を持ち込み、申請する。遺言書は画像データ化もして保管され、遺言者は必要な時に閲覧でき、返還請求も可能。相続人や受遺者らは遺言者の死亡後、遺言書が保管されているかの確認や遺言書の写しの交付請求、閲覧ができる。

大沢さんは「相続争いが多発するのは、民法が社会情勢の変化に対応していないから。民法改正は家族の在り方の変化に対応したもので、法定相続分に従った遺産の分配だけでなく、実質的に公平な分配に配慮したものだ。
また、相続により残された高齢配偶者の生活を守る仕組みも導入した。この他、遺言の利用を促進し、相続争いを防止する観点から遺言の取り扱いが緩和された。しかし、相続争いを防ぐ最も有効な手段は、親族間の円満な人間関係を構築することである」と言う。

(宮沢厚子)

(出典:法務省ホームページ掲載のパンフレット「相続に関するルールが大きく変わります」)


投稿者: mgpress