光芒の中に現れた“白竜”を連想させる雲(塩尻市片丘)

光芒の中に姿を現した雲。右に向かう“白竜”を連想させる=ニコンD5、ニコンEDAF-Sニッコール80~400ミリ、ストロボ(パナソニックPE60SG)

雲間から一瞬の光 竜神幽玄の舞

厚い雲に覆われ、薄暗い梅雨末期の松本平南部。7月21日の夕刻前、雨雲の一角が割れ、のぞいた小さな青空の窓から、光芒(こうぼう)が降り注ぐ。その中に、空中を舞う“白竜”のような神秘的な模様が浮かび上がった。
塩尻市片丘の東山山ろく線(通称・しののめの道)近くの農道。午後5時半、ネムノキの優しい花風情を撮ろうと探し回っていた時だった。塩尻市街地や北側の安曇野方面は、降りだした雨でかすんで暗い。それとは対照的に、青空の小窓の下にある県営松本空港周辺だけは、陽光を浴びてくっきりと明るかった。「天使のはしご」と呼ばれる光芒に照らし出された光景は、まるでスポットライトが当たるステージを暗い観客席から眺めているようだ。
気付くと塩尻側から松本方面に向かって、低い場所をはうように進む帯状の雨雲に目が留まった。風に乗り、形を変幻させ、うねりながら流れている。「光芒の中を通過するかも」。予感が走った。とっさに、竜神画で知られる龍敬子画伯(東京都豊島区)の絵画が脳裏に浮かび、目の前の構図と重なった。興奮を抑え、ネムノキの花を前景にカメラを構える。「白竜だ!」。光芒が差すステージに突如として姿を現し、舞う幽玄神秘な光景に息をのみつつ、シャッターを切った。その直後、天空が雲で覆われ、つかの間のショーは幕を下ろした。
(丸山祥司)