相澤病院作業療法士塚原千恵さん市民講座に学ぶ 高齢者の運転と脳の働き

全国各地で相次いでいる高齢ドライバーの事故。松本市本庄2の相澤病院は7月、同院の作業療法士、塚原千恵さん(33)を講師に、安全運転に必要な脳の働きなどを紹介する市民講座「高齢者の自動車運転と脳の働き」を開いた。主な内容と、塚原さんに聞いた注意力や判断力などを鍛えるトレーニングについて紹介する。

老化による機能低下に自覚を

【高齢者の運転事故の特徴】警視庁交通総務課統計の「違反別にみた高齢運転者交通事故発生状況(2018年)」によると、最も多いのは「安全不確認」。「交差点安全進行」、「前方不注意」と続いた。
人的要因をみると、脇見や考え事をしていたことなどによる「発見の遅れ」が8割余りを占めた。
【安全な自動車運転に必要なこと】運転には認知、予測、判断、操作の複合的な能力が求められる。加齢に伴いそれらの能力が低下してくるが、一番大事で基盤となるのは「注意力」。運転に求められる代表的な認知機能には次の7つがあり、自分の能力を自覚して運転することが大切だ。
(1)注意機能変化する道路状況に対応したり、車や歩行者に注意を払い続ける能力。また、同時に複数の事象に目を向ける能力。
(2)言語機能道路標識や案内板の文字理解、事故の際の状況を説明できる能力。
(3)記憶行き先や目的地までの道順、交通法令や運転操作の方法などを記憶する能力。
(4)社会的行動感情をコントロールし、交通ルールを守って安全に運転する能力。
(5)病識病識とは、その人が病的な状態にあることを自覚していること。自分の運転の能力と障害を認め、それを補う能力。
(6)視空間認知車線内の適切な位置を走る、安全な車線変更、車庫入れなどができる能力。有効視野(標識の文字を読んだり特定の物や出来事に注目する注視点の周りで、ほぼ明瞭に認識できる範囲)は、加齢によって縮小するが自覚しにくい。
(7)遂行機能運転経路の立案、臨機応変な操作や円滑な対応をする能力。
【高齢ドライバーに必要なこと】「身体機能や認知機能は加齢とともに低下していく」という自覚を持って日々運転することが重要。持病の悪化など健康に起因する事故もあるので、日々の体調管理も大切だ。
いずれ運転ができなくなることに備え、マイカーに代わる移動手段を考えたり情報を収集したりする。家族で話し合っておくことも必要だ。
運転免許を返納すると、身分証明書として使える「運転経歴証明書」の交付を受けられる。自主返納を促す目的で、この取得費に助成金を出す自治体もあるので確認してみて。

複数の作業同時に

【注意力や判断力を鍛えるトレーニングの一例】2つ以上の課題を同時にこなす「デュアルタスク(二重課題)」のトレーニングが有効といわれる。
★〇〇しながら××する▽しり取りをしながら歩く▽その場で足踏みしながら100から3ずつ引き算する▽コップに入った水をこぼさないように歩く▽一人じゃんけん。右手で必ず勝つように先に出し、左手は遅れて負けるように出す▽すりすりトントン運動=イラスト。座位で右手はグーで太ももをトントンとたたきながら、左手はパーで太ももを前後になでる。10回やったら左右反対に切り替える|など。
★調理注意力や集中力、段取りよく行う力(遂行機能)を全般に使う活動として有効。ご飯が炊きあがるのとほぼ同時におかずが完成し、使った調理器具の片付けを終えることを目指し、時間配分や作業する順番などを考える。
★その他▽孫や仲間と「WiiFit」などのゲームで運動する▽市販の脳トレドリルに取り組む▽マージャンや将棋などを仲間と行う▽今までしたことのない活動(そば打ち、マレットゴルフなど何でも)に挑戦-など。初めての経験は脳に良い刺激になる。
賭け事も節度のある範囲内なら刺激になるし、シルバー人材センターに登録して軽作業に従事するのもお勧め。これらは運転能力に限らず、認知機能低下の予防に役立つ。

(丸山知鶴)


投稿者: mgpress