佐藤大史・アラスカ撮影紀行 「手付かずの自然に生きるもの」

「大きな地球」再確認

アラスカのスワード半島で出会ったジャコウウシ。氷河期、干上がったベーリング海峡を渡りマンモスと共に厳寒期を生き抜いた(撮影:佐藤大史)

米国アラスカ州に、5月初旬~7月中旬、撮影に行った。アラスカ、と一口に言っても日本の4倍の面積はあり、年に数カ月の撮影ではとてもその全貌を捉えきることはできない。まして相手が自然や生き物であればなおさら思い通りに進まないのだが、それでも、年々強くなる、この世界を伝えたいという思いに押され、5年目の遠征を決行した。
今年はジャコウウシを被写体に選び、挑んできた。北極圏に住む、太古を思わせる姿。10万年というスケールの時をジャコウウシは生きてきた。その間にマンモスは死に絶えたが、彼らはまだ現世にある。
アラスカに残る手付かずの自然。そこに生きる生き物たちの生きざまや足跡。まずはやっとこさ写してきた写真を見ていただきたい。

グリズリーの親子が周辺の様子をのぞいていた。母の足取りは時に速く時に遅く(撮影:佐藤大史)
母親の後を必死についていく今年生まれたグリズリーの子と、慎重に足元を選んで歩く母熊(撮影:佐藤大史)

連綿と続く歴史の一端記録したい

アラスカはとても広い。同じエリアでも、入る尾根や谷を変えるだけでも風景も出会う生き物も違い、山脈の北側と南側でもその表情は異なる。そしてできるだけ自分の足でアプローチする私の非効率的なスタイルでは、おそらく人生をかけても「アラスカを撮った」とはいえないであろう。そんな中でも、なるべく深く自然に入り、可能な限り多くの美しい瞬間や光景を収め、皆さんに伝える。それが私の役割とも思い、毎年遠征に挑んでいる。

白夜の頃、深夜も草をはみ続けるジャコウウシたち(撮影:佐藤大史)
大きな山脈にある静かな谷の小さな岩の間にすむナキウサギ(撮影:佐藤大史)

尾根を隔てた向こう側 広がるのは別の世界

今年は2カ月半という全力疾走できる短期間に設定し、例年と違うエリアにも多く足を踏み入れた。そして、少し思考方法を変えて撮ることを意識した。例えば、左にあるグリズリーの親子の写真。これは、ある尾根をメインにドキュメンタリー的に撮ったものだ。尾根の上にテントを張り、少しずつ移動しながらそこで出会う生き物を撮り、その尾根に遥か昔から流れてきたであろう光景を写真に記す、というものだ。尾根に取り付いて4日目に出会った。この母熊も、その母熊も、子どもの頃この稜線(りょうせん)を歩いたのかな、そんなことを思った。他に、ナキウサギのすむ谷を1週間ほど密着して撮ったりもした。
地球を感じてもらいたい、私たちの誰もが属している大きな存在を再確認してもらいたい。写真でそれが伝えられるだろうか。その想いでまずアラスカから撮影に挑んだ。元々は数年で撮影地を変えるつもりでいたが、原野を歩くほどにその大きさに圧倒され、伝えたい気持ちは膨らんでいくばかりだ。

日が注ぐ稜線で休むドールシープたち(撮影:佐藤大史)
自らそばに駆け寄ってきて、警戒の声を上げるホッキョクジリス(撮影:佐藤大史)

今回の撮影も含めた佐藤さんの写真展は10月12~20日、安曇野市豊科近代美術館で開催。入場無料。
(佐藤大史・写真家・安曇野市在住)


投稿者: mgpress