松本市地域包括ケア協議会会長小林医師に聞く「松本市版リビングウィル」 自分らしい終末期医療を

人生の最後を自分らしく迎えるために終末期医療の希望を記す「リビングウイル」(事前指示書)。松本市医師会と市地域包括ケア協議会は「松本市版リビングウィル」を今年5月に作成し、普及に取り組んでいます。目的や特徴などを同協議会会長で小林内科医院(同市里山辺)院長の小林正典医師(55)に聞きました。

考え、相談し、文書に
―リビングウイルとは。なぜ松本市版を?
法的な拘束力はないのが大前提です。治療をしても回復が見込めない状態になった時の「延命治療」について、考えや希望を文書に残しておくものです。
市医師会では2017年度から「リビングウイルを考える」事業に取り組みました。当初は国立長寿医療研究センター(愛知県)の「終末期医療の事前指示書」を参考にしていましたが、地域性を加味した「松本市版」を作ろうと専門職や行政、住民らと議論し、約40回の修正を経て5月1日に一般公開しました。
全国各地でリビングウイル作成の取り組みが行われており、県内では飯田医師会が08年に、須高地域医療福祉推進協議会(須坂市、小布施町、高山村)は12年に作りました。それぞれの考えで内容を決めています。
―なぜ今、「リビングウイル」か。
厚生労働省の「死亡場所」調査によると、1951年は自宅が82・5%、病院は9・1%でしたが、09年は病院78・4%、自宅12・4%と逆転しました。
一方、治る見込みがない病気になった場合に最期はどこで迎えたいかという設問(内閣府12年度高齢者の健康に関する意識調査)では、半数以上が「自宅」と回答しています。在宅療養を可能にする一つの条件として、「自分の生き方は自分で決める」ことが注目されています。
―松本市版の特徴、入手方法は。
松本市版では「自分の思い」を、医師やケアマネジャーなど医療や専門家の支援を受けながら、家族も交えて話し合う「人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)」の重要性を強調したことです。
また、かかりつけ医が内容を一緒に確認することで考えを共有し、本人の意思ができるだけ尊重されることを目指します。発行は市医師会と市地域包括ケア協議会の連名にしました。
用紙はA4判と携帯用があり、医療機関や市役所、地域包括支援センターなどに置いています。松本市医師会のホームページからダウンロードもできます。
松本市民でない人も使えますが、松本市医師会所属の医療機関以外には現時点では情報提供をしていません。
―どう書けばいいか。
「今の気持ち」に添って希望の有無を記してください。決めたくない、決められないという場合は「今は決めない」と書きましょう。
記入する前か後に、信頼できる人と「人生会議」をすることをお勧めします。自身で医療上の判断などの意思表示ができなくなった際に、医師が相談する代理判断者としてその方に署名してもらいます。
―書いた後は。
用紙をかかりつけ医に持参して一緒に確認します。気になることがあれば、納得できるまで何度でも相談してください。
記入欄(医療機関名、医師名、電話番号)に記載してもらったら、原本は自分で持ち帰り、かかりつけ医はコピーをカルテと一緒に保管します。信頼できる人に保管場所を伝えるか、コピーを渡しておくとよいでしょう。
リビングウイルは書き直せます。誕生日など折に触れて見直すことをお勧めします。「万が一のことを話すのは縁起でもない」としないで、大切な人と話し合うきっかけのツールとして活用しましょう。

松本市版を実践意思共有し安心
松本市里山辺の高齢者施設で暮らす女性Aさん(84)。終末期医療の希望をつづった後に「松本市版リビングウィル」を知り、用紙を入手して記入した。
若い頃から病気で何度も手術をし、数年前に交通事故で夫を亡くした。子どももいないため遺言状を作成。その後、自分で意思を伝えられない状況になった時に備え、「心肺停止の際は心臓マッサージをしないでほしい」「痛みは取り除いてほしい」など4つのお願いを紙に書いた。
松本市版リビングウィルを書いた感想は、「自分が思っていることを的確に答えられる内容だった。ただ書いただけでなく、医師や代理人など共感してくれる人がいる安心感があります」。
(井出順子)


投稿者: mgpress