生き方考えるきっかけに 「流れる雲よ」上演

20~30代を中心とした松本地方の若者37人が東京の劇団「アトリエエッジ」のミュージカル作品を招致し、22日に松本市のまつもと市民芸術館小ホールで2回公演する。
上演作「流れる雲よ」は太平洋戦争末期の神風特攻隊を題材にした作品で、2000年から全国各地で上演されている。公演を見た古畑あずささん(36、大町市常盤)が、県内でも上演を、と友人らに呼びかけた。
当初は特攻隊のことを「知らない」「暗い」「興味がない」という反応ばかり。昨年8月、実行委員会「RAISE(レイズ)」を立ち上げ、作品の主題である「命の使い方」に焦点を当てたトークイベントや舞台のDVD上映会を1年にわたって開き、賛同者を獲得。チケットは完売し、今後の上演継続にも可能性が見えてきた。

特攻隊を題材に 生き方問う作品
思い伝える活動経て公演実現

「自分の生き方を考えるきっかけにしてもらえたら」。それが「RAISE」に携わる若者たち共通の思いだ。
「流れる雲よ」は、2000年度ギャラクシー賞奨励賞を受賞したラジオドラマ作品。それを東京の劇団「アトリエエッジ」がミュージカル作品にした。
太平洋戦争末期の1945年、神風特攻隊基地のラジオから未来(2019年)の放送が聞こえてくるという設定。ラジオで8月15日に終戦することを知った隊員たちが出撃前夜、ラジオ局に電話して現代のラジオDJと会話─。日本の未来を信じて死んでいった若者たちの物語だ。
松本公演を呼びかけた古畑あずささんは2017年、友人が出演している縁で「深く考えずに」上演作の東京公演を見に行った。「命の使い方について考えさせられた。この舞台を地元の人に見てもらうことが今の私の使命だと感じた」。18年5月から仲間に声をかけ、20人余りでレイズを立ち上げた。
メンバーは、上演作の舞台を実際に見たりDVDを鑑賞したりして、心を動かされて活動に参加した。
彼らにとって特攻隊は「教科書で読んだことがある程度」。同世代に話を振っても関心は低く、年配者からは「特攻の話は見るのがつらい」と言われることもあったという。
「特攻隊を美化したり戦争反対を訴えたりする内容ではなく、生き方を問う作品。先入観を持たず見てほしい」と、レイズは今年7月までに合計7回、「アクロス・ザ・ボーダー~僕らの生きる道」と題したトークイベントを市内を中心に開催。昨年11月のイベントでは、メンバーや出演する俳優が現在の仕事や自殺未遂の経験など、それぞれの生き方を語り、参加者と一緒に考えた。
春からはSNS(会員制交流サイト)、宣伝、チケット、デザイン、クラウドファンディングの5班に分かれて公演を準備。チケットはメンバーが公演招致への思いを友人、知人らに伝えながら直接販売。全480席分のチケットは完売し、クラウドファンディングで活動資金30万円を集めた。企業協賛なども増え、黒字で招致できる見通しになった。

メンバーも変化 精一杯生きよう

1年にわたる活動でメンバーは何を感じたのか。
今年8月下旬の集まりに顔を出すと、メンバーの表情は自信にあふれていた。介護福祉士の平沢恵理奈さん(26、同市城西)は「活動を通じて、自分の意見を言えるようになった。この活動は今までの人生で一番大きな出来事。20代で経験できてよかった」と話す。
会社員の沖葵さん(24、同市平田)は、活動がきっかけで7月に転職した。「前職は大好きな仕事でやりがいもあったが、夜遅くまで仕事があり土日も勤務。友達との交流が限られた。事務の仕事に転職し、周りの人との交流を大切にする生き方を選んだ」と晴れやかな表情だ。
「公演招致はゴールではない」と古畑さん。来年も開催する可能性も生まれた。人生を精一杯(いっぱい)生きる人を増やし、街を元気にしようと、活動は続く。
レイズへの問い合わせはメール(raisingsoul2018@gmail.com)
(松尾尚久)


投稿者: mgpress