
全国地域リーグ決勝大会決勝ラウンド(12月4~6日)
2009年12月6日、サッカー北信越リーグ1部の松本山雅FCは、松本市の総合球技場アルウィンで開いた第33回全国地域リーグ決勝大会の決勝ラウンド最終日で日立栃木ウーヴァを2─1で破って優勝。翌シーズンのJFL(日本フットボールリーグ)昇格を決めた。県内のクラブが全国リーグのJFLで戦うのは初めて。
山雅は04年、プロサッカーのJリーグを目指すと表明。その一段階下のJFL昇格を争う同大会に3年連続で挑戦し、ようやく壁を乗り越えた。
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決勝ラウンドは12月4~6日、前月下旬の1次ラウンドを勝ち上がった北信越1部の山雅とツエーゲン金沢、関東1部のYSCCと日立栃木の4チームが総当たり。
山雅は初日の金沢戦を0─0で引き分け、PK戦(4─5)で敗れて勝ち点1。2日目のYSCC戦は、後半2分のDF鐡戸のゴールで1─0で競り勝ち、勝ち点3を加えた。
最終日の日立栃木戦は、前半14分に相手カウンターで先制されたが、同22分にMF木村の右クロスに走り込んだMF大西が決めて追い付き、同43分にFW柿本の右からの折り返しをFW小林が蹴り込んで逆転。山雅は3試合で勝ち点計7とし、同6の日立栃木を上回った。
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「勝ち点ゼロ(=90分間負け)の試合をしない」のが、決勝ラウンドを前に山雅の吉澤監督が挙げた昇格圏内(2位以上)入りの条件だった。4チームの中で唯一、90分間負けがなかった山雅は狙い通りに勝ち点を積み上げ、1位でJFL昇格を決めた。
最終日の日立栃木戦の前の試合で金沢がPK負けし、山雅の2位以上と昇格が確定した。しかし、選手は目の前の試合に勝つことに集中し、アルウィンに詰めかけた1万965人の観客の期待に応えた。
初戦の開始早々、1次ラウンド2試合でエース柿本の先制弾をアシストしたDF阿部が負傷退場し、2戦目は警告の累積でMF北村とDF山崎が、3戦目はMF斎藤が出場停止に。
しかし、阿部に代わって急きょ出場したDF金沢も、山崎と斎藤の代役を務めたベテランのDF三本菅も「準備をして(出番を)待っていた」と口をそろえた。
2人とも3度目の地域決勝大会で、前年と前々年の敗退の悔しさを知る。「誰が出てもチームの力は変わらない」。多くの選手が強調する層の厚さと、重ねてきた経験が無駄ではなかったことを証明してみせた。
リーグ4位に終わった後の天皇杯県予選、全国社会人選手権の北信越予選と、ぎりぎりまで追い詰められた試合をものにする中で「いろいろ言わなくても、意識できる選手が増えた」と吉澤監督。堅守速攻への戦術転換も、天皇杯でJ1浦和を破ったことで揺るぎない自信を得た。
来季はいよいよ全国リーグが舞台。「松本から、信州からJへ」の夢に一歩近づいた山雅が、どんな戦いを見せてくれるか楽しみだ。(おわり)
(山岡史明)
※「緑のキセキプレイバック2009」は松本山雅FCが北信越リーグ1部からJリーグの一歩手前となるJFL(日本フットボールリーグ)昇格を決めた2009(平成21)年の劇的なシーズンを、松本平タウン情報に掲載した記事や写真を再構成してお届けしました。