山登りのススメ④ 山小屋を利用する 初心者の心強い味方

信州の山々を登って一番驚いたのは、山小屋の多さだ。特に北アルプスは場所によっては3時間歩くごとに違う小屋が現れ、おいしいご飯を提供してくれる。山登り初心者にとって心強い味方の山小屋を利用し、1泊2日で大町市の爺ケ岳(2669メートル)に登ってみた。
山中で宿泊すると思うと、最初はどうしても荷物が多くなってしまいがち。ヘッドランプやツェルト(簡易テント)、フリースやダウンジャケットなどの防寒着、歯ブラシ(山では歯磨き粉は水を汚すので使わない)、着替えがあれば十分。余分に物を持って行かないよう心掛けたい。
立山黒部アルペンルートを走る「関電トンネル電気バス」の扇沢駅手前に、爺ケ岳の登山口がある。尾根へと延びる柏原新道はよく整備されており、歩きやすい。この日はあいにくの霧雨模様。登山口でも標高1400メートルほどあり、少し肌寒いが、これから動くことを考えて薄いシャツ一枚で出発した。木々が作る影と扇沢のせせらぎの音でさらに体感温度が下がる。
程よい登りが続き、だいぶ体も温まってきた。柏原新道には「ケルン」「富士見坂」「水平道」など各所に標識があり、休憩場所や傾斜などの手掛かりになる。晴れていれば途中、種池山荘が遠くに望める。霧雨はいつの間にか雨に。急いで雨具を着て、足元に注意しながら進む。
途中、崩落した斜面を横切る場所がある。道も細く崩れやすいので注意が必要。写真を撮っている人がいたが、危険な場所は速やかに通過したい。ここを越えれば山小屋はすぐそこ。登山開始から約4時間で種池山荘に着いた。盛りは過ぎていたが、山荘手前の斜面にチングルマが広がっていた。ここから山頂は往復約1時間40分。だが、稜線(りょうせん)に出ると体が浮きそうなくらいの強風。本日の登頂はあきらめた。
山小屋で、持参したお湯でフリーズドライのオニオンスープをすする。温かいものを飲むと、強風と寒さに奪われた体力が戻ってくるような気がする。ぬれた雨具などは乾燥室で乾かせる。ジップ付きのビニール袋に入れて持参したシャツとダウンジャケットに着替えてほっと一息。
山小屋の消灯はおおむね午後9時。以降のおしゃべりは慎みたい。早朝に出発する時の身支度、特にレジ袋のガサガサという音はかなり響く。まだ眠っている人に配慮しよう。
翌朝も霧がかっていたが風も少し収まり、周囲を見て回る余裕ができた。稜線上はこれまでの道のりと違い、石がゴロゴロ転がっている。「ライチョウの親子がいた」と喜ぶ登山者がいた。山のアイドル、ライチョウは天候が悪い時に出合える可能性が高い。爺ケ岳のピークは3つあり、中峰が最高点。天気に恵まれれば鹿島槍ケ岳や、剱岳など立山連峰を望める絶好の展望スポットになる。
登山では下山時に事故が起こりやすい。種池山荘から登山口まで約3時間。最後まで気を緩めずに下りて初めて「登頂成功」だ。
山小屋泊を何度か重ねたら、山小屋近くのテント場で野営にも挑戦してみては。山と自分を隔てるのはテントの生地1枚のみ。大自然との一体感と、野趣あふれる山中泊が楽しめる。(終わり)
※表記の時間は休憩なしの標準行動時間
【メモ】
柏原新道登山口は信濃大町駅から車で約25分。バスは扇沢駅まで約40分、大人往復2500円。扇沢駅から徒歩約15分。種池山荘は1泊2食付きで9700円。
(中山友美)


投稿者: mgpress